研究領域 | 新海洋像:その機能と持続的利用 |
研究課題/領域番号 |
24121002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 幸彦 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (80345058)
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研究分担者 |
纐纈 慎也 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任研究員 (30421887)
奥西 武 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 東北区水産研究所, グループ長 (60374576)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 海洋循環 / 海洋低次生産 / 物質循環 / 中規模渦 / モード水 |
研究実績の概要 |
地球観測網とコンピュータシミュレーション技術の発展によって、物理的平均場に見出される循環系 (gyre)より空間スケールが小さく時間スケールが短いモード水や中規模渦といった現象が熱や物質の輸送に本質的な役割を果たしていること、またそれらの存在頻度が海盆スケールで見て一様でないことが明らかになってきた。本研究では、「モード水形成、中規模渦等の海洋物理過程が特異な生物・化学過程を励起し、その分布域が新しい区系として識別できる」という作業仮説に基づき、観測と既往資料の解析、数値シミュレーションによる取り組みを実施してきた。 平成27年度までに、作業仮説に関わる事例として黒潮・親潮域に焦点を当てた衛星データ解析、モデリング、プロファイリングフロート観測、また研究領域が主体となって実施した海盆スケールの2つの航海 (白鳳丸KH-13-7, KH-14-3)による観測などを実施してきた。これらの結果、北太平洋における中規模渦の分布様式、クロロフィルa分布に与える影響、また親潮域においては高気圧渦の移動や他の渦との相互作用等、特徴的な動態が明らかとなった。黒潮続流域を対象とした生態系モデルからは、この海域の渦による栄養塩収支が解明されつつある。また、これらの知見をベースに構築した「物理過程に基づく海洋区系」は平成26年度に初めて提案後、他班との比較検証を通して改良を重ねており、平成27年度にはGoogle Earth、Google Map等を用いたマッピング方法を提案し、価値評価へ向けての議論に貢献してきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究は順調であり、当初の目的であった区系の提案は平成26年度末に初案を提示し、その後も他班との議論を通じて改良を施し、平成27年度にはマッピングも実施している。船舶観測やデータ解析から得られた海洋物理、物質循環、低次生物生産に関わる個別の知見も、順調に論文化が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成28年度は、領域全体として目指してきた「新しい海の台帳」提案に貢献するため、研究計画班として提案した「海洋物理過程に基づく区系」が、他の視点から提案される区系と適切に比較されるよう、生物系、社会科学系グループと一層の議論を行う。また、観測を通して新たに生じた海洋科学的疑問点である「貧栄養海域での栄養塩利用」について、移流や混合などの物理的側面から解析に協力していく。
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