研究領域 | 新海洋像:その機能と持続的利用 |
研究課題/領域番号 |
24121005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川 浩史 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (50260518)
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研究分担者 |
高橋 一生 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (00301581)
古谷 研 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30143548)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 生元素動態 / 海洋生物地球化学 / 海洋生態 / 炭素循環 / 窒素循環 / 海洋環境 |
研究実績の概要 |
海洋表層における新生産・再生生産に関わる炭素・窒素循環のプロセスとして、窒素固定(古谷)、動物プランクトン(高橋)、溶存有機物Dissolved Organic Matter: DOM)-従属栄養細菌群集(小川・福田)に関わるプロセスに着目し研究を進めた。 まず、窒素固定に関しては、黒潮域とその周辺海域においてTrichodesmium属と窒素固定活性の分布を観測するとともに、島の存在が黒潮域のTrichodesmium属の分布に影響を与える影響についても調査した。その結果、黒潮でTrichodesmium属の現存量が高くなるのはそこでの栄養塩の供給が多いからではなく、黒潮周辺の島で増殖したTrichodesmium属が黒潮に運ばれるためであることを示した。 次に、動物プランクトンが関与する炭素・窒素循環プロセスに焦点をあてた研究として、中部太平洋の南半球亜熱帯から亜北極の海域で、幅広い栄養段階の生物および懸濁態粒子の安定同位体比の解析を行い、中部太平洋亜熱帯域における窒素固定由来の窒素は、他の海域と同様に動物プランクトンを経て高次栄養段階まで生食連鎖によって転送され、亜熱帯貧栄養海域の生物生産に大きく寄与していることが示された。亜熱帯域の再生生産に果たす動物プランクトンの排泄過程の役割を明らかにし、飼育環境下における排泄速度の変動は、種または属レベルで異なる可能性が示唆された。 続いて、再生生産の主軸ともいえる易分解性DOMが、従属栄養細菌群集に利用されるプロセスに着目し研究を行った結果、亜熱帯循環域を中心とした中低緯度の貧栄養海域においては、赤道や高緯度海域に比べ再生生産の寄与が高い事が示された。一方、亜熱帯海域表層に高濃度で蓄積するDOMに対する従属栄養細菌による利用性を調べるための実験的解析を行ったところ、細菌群集の生産が栄養塩添加により促進することが再確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去に実施した研究航海で得られた成果の解析結果をもとに、学術研究船白鳳丸のKH-14-3次航海(2014年6月~8月、主席:小川浩史)において、純一次生産、窒素固定、従属栄養細菌生産、動物プランクトンのアンモニア排泄等の炭素・窒素循環に関わる生物活性の測定を実施し、中部北太平洋における生物プロセスのデータセットを充実させることができた。また、炭素・地窒素安定同位体比による食物連鎖の解析を新たに導入し、窒素固由来の窒素の生態系への伝播に関する情報基盤が整備された。
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今後の研究の推進方策 |
これまで実施された学術研究船白鳳丸によって得られている純一次生産、窒素固定、従属栄養細菌生産の3つのフラックスのデータ、および一部の試料について測定されている、動物プランクトンによる捕食、鉛直移動、排泄の速度、溶存有機物の分解速度のデータ、さらに項目A01の齊藤班において得られている、漂流ブイ-セディメントトラップ観測による炭素・窒素の沈降フラックスのデータを全て統合し、亜熱帯海域表層における炭素・窒素循環のマスバランスが矛盾なく説明できているかどうか、検証を進める。また、並行し、これらの航海で得られた有機物、生物試料の分析を進める。
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