計画研究
本研究班では、北太平洋をターゲットに生元素や海洋生物の長期観測データ及び、衛星観測データを用いて、その生物地球化学的および生態学的特性に基づき、新たな海洋区系を開発することを目標とした。これまでそれぞれ異なるアプローチにより、①生元素の季節変動パターンからみた海洋区系、②衛星データに基づくクロロフィルの季節変動パターンからみた海洋区系、③植物プランクトンの多様性と制限栄養塩からみた海洋区系、という3つの海洋区系を提案してきた。最終年である28年度は、1) 生元素循環と生態系長期変動のメカニズム解明とその相互作用、2) 海洋区系の将来予測を重点課題とし、気候の周期変動等の環境変化に対し、海洋区毎に異なる長期変動パターン及び変動プロセスを調べるとともに、表層の低次生態系構造の変化と炭素の鉛直輸送等の物質循環プロセスの関係を調べた。生元素循環の長期変動に関しては、 亜硝酸とアンモニアについて新たにグリッドデータを作成し、その経年変動の海域特性と、生物活動による短期の生成・消費サイクルとの関連を明らかにした。亜硝酸とアンモニアの表層広域分布の変動機構を実データを用いて示唆した研究は今回の解析が初めてである。さらに長期プランクトン観測データを解析することにより、北太平洋における表層動物プランクトンによる炭素の鉛直輸送効率への寄与が、北大西洋の約2倍であることを明らかにした。将来予測に関しては「植物プランクトンの多様性と制限栄養塩からみた海洋区系」に基づき、 栄養塩環境とクロロフィル濃度を、マルチモデルアンサンブル将来予測の結果で評価した場合に現在の海洋区の境界がどのように変化するのか、海域的な応答の違いとその要因についてまとめた。本課題で提案した区系は、外洋における効率的な観測計画のための指標となる他、生態系の海域保全管理において有用な科学的情報となるであろう。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
『新海洋像」研究領域のウェブページにて当研究班の成果等を公表している。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 13件、 招待講演 2件)
SAHFOS Technical Report
巻: 11 ページ: 1-32
Deep-Sea Research I
巻: 109 ページ: 1-9
10.1016/j.dsr.2015.12.010
Journal of Crustacean Biology
巻: 37 ページ: 29-36
10.1093/jcbiol/ruw014
Journal of Oceanography
巻: 72 ページ: 666-685
10.1007/S10872-016-0379-8