研究領域 | 新海洋像:その機能と持続的利用 |
研究課題/領域番号 |
24121010
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
八木 信行 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (80533992)
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研究分担者 |
中田 達也 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (00597289)
都留 康子 中央大学, 法学部, 教授 (30292999)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 国連海洋法条約 / 生物多様性条約 / 遺伝子資源 / 生態系サービス / 国連食糧農業機関 / 公海 / 漁業管理 / 合意形成 |
研究概要 |
本課題は、海の恵みを国際社会が最適利用するのに必要となる条件を、国際法の実施側面と 国際政治の観点から明確化させることを目的としている。 平成24年度(繰り越し分を含む)においては、代表者である八木(東大)が、前FAO(国連食糧農業機関)関係者からヒアリングを行い、「FAO 公海上の漁船による国際的な保存・ 管理措置の遵守を促進するための協定(フラッギング協定)」などの起草過程に関する調査を行った。また、「国連海洋法条約」において国家管轄圏外の生物多様性を保全するための新条約策定の是非について議論がなされている状況を調査した。これらの一部は、八木信行 (2013).(分担執筆). エコロジーをデザインするーエコ・フィロソフィーの挑戦. 春秋社. 東京. pp114-133.として出版した。 分担者である都留(中央大)は、「国連海洋法条約」にアメリカが批准をしていない歴史的経緯と問題点、現在の動向についての分析を行った。アジア海域で勢力を強化する中国に法的に歯止めをかける意味でもオバマ政権内では条約批准に前向きの姿勢が見られるが、上院議会内では、国際条約に制約を受けることを嫌う共和党の反対勢力の影響力が強く、いまだ批准の見込みがたっていないことを明らかにした。 更に分担者である中田(東京海洋大)は、生態系サービスを管理する適当な国際機関が存在しない現在、これに間接的に関わる国際事象が生じている例として、メカジキ紛争を取り上げ、事象の分析を通じて、生態系サービスの管理を考えるにあたって資する論理を抽出しようとした。 以上に基づき、領域の研究者一同を集めた会合において、海洋生態系サービスなどに関する国際的な現状と課題について報告を行った。これをもって、自然科学を扱う領域の他の研究チームに対して社会科学的な側面の情報をインプットする作業も行うことができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度については、調査の進展は概ね順調である。特に、FAOや国連海洋法条約などに関する研究については、上述の通り計画に沿って進行している状況である。 なお、以下の案件については当初平成24年度の実施を予定していたが、やむを得ない状況が生じたために平成25年度に予算を繰り越して実施した。 (1)シンポジウムの開催:参加者の都合が合わずにシンポジウムの開催を平成25年度にずらしたが、これを10月1日に開催した。これは、当班(A04)が、他班(総括班とA03班)と共同して実施したもので、海洋生態系に対する人的な影響を評価しサイエンス誌に発表したベン・ハルパーン博士(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)、漁業がもたらす社会貢献などを評価しているジム・アンダーソン博士(世界銀行)、海洋生物多様性を評価する活動を企画するジヒュン・リー博士(生物多様性条約事務局)、外洋の海洋生態系に関する評価に従事するピーター・ブリッジウォーター博士(現英国自然保全委員会議長、前ラムサール条約事務局長、元国際捕鯨委員会議長)などを招聘し、領域全体の研究課題に関して世界の最先端がどこにあるのかを確認し、また国連海洋法条約などに代わる新しい海洋秩序の構築方法などを議論した。 (2)国連海洋法条約に関する調査:代表者の八木が国連本部で2013年8月に開催された「第6回国家管轄権外の海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用(BBNJ)に関するアドホック非公式作業部会」に出席し、科学が行政官による国際交渉の場でどの程度活用される余地があるのかなどについて調査を行った。 (3)また分担者の中田は長崎県島嶼部で調査を実施した。 平成24年度時点で次年度に繰り越した課題は全て予定通り25年度で実行したため、25年度終了時には当初予定通りの進行スケジュールに戻すことができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の目的を達成させるために、以下の3項目に関して重点的に研究を実施する考えである。 (1)国際機関における合意形成に関し、主として配分問題に関する合意形成問題の研究:大西洋マグロ類管理機関(ICCAT)などにおいて、科学委員会でなされた議論の中で本会議の意志決定に活用されたもの、されていないものが存在する。これは、合意の後の利益配分(つまり漁獲枠の国別の配分)が困難になる可能性を見越して加盟国間の合意が難しくなっている可能性がある。この仮説を検証するための調査を実施する。また、国連海洋法条約で新しく検討されている実施協定についても、その議論内容を分析し、同様の問題が生じていないか考察を行う。更には、漁業以外の条約である世界貿易機関(WTO)ドーハラウンドにおける漁業補助金規制を巡る議論においても同様の研究を行い、海洋資源管理を目的とするフォーラムでの議論と、貿易自由化をめざすフォーラムでの議論の差異などを明らかにする。 (2)国際的な合意形成に関する定量的な研究:海洋に関する既存の国際的な政策決定において、科学的な知見を意志決定に反映できた場合と、できていなかった場合について、その状況を類型化する。特に、共分散構造分析を用いて、交渉成功の要因が何に起因しているのか、例えば代表団の文系理系の構成比や交渉参加国の数などが影響を与えているのかを含めて因果関係を明らかにする。 (3)領域内の自然科学系研究班との関連:本課題は、科学に不確実性が存在するとの視点をもとに、漁業管理などに関する国際フォーラムの活動を分析する視点も有しており、これは従来の研究には見られないものであるといえる。その視点から、交渉の成功要因または失敗要因、更には自然科学的な新しい知見が国際社会のルールになる過程において、どのように議論が収斂していったのかを明らかにし、これを領域内の他の研究班と共有する。
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