研究領域 | 新海洋像:その機能と持続的利用 |
研究課題/領域番号 |
24121010
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
八木 信行 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (80533992)
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研究分担者 |
都留 康子 上智大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (30292999)
堀 美菜 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 講師 (60582476)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 国連海洋法条約 / 生物多様性条約 / 生態系サービス / 国連食糧農業機関 / 公海 / 漁業管理 / 合意形成 / 国際捕鯨委員会 |
研究実績の概要 |
八木(東大):2014年5月に国連本部で開催された第15回国連海洋法条約および海洋に関する非公式協議に出席(旅費は外務省が支給)、研究結果を発表するとともに、国連における国家管轄外の生物多様性保全問題における合意形成状況を調査した。また、7月および9月にはIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム)の専門家会合に出席し(旅費は当研究費を使用)、合意形成過程を調査した。更に本研究費で雇用した特任研究員(Robert Blasiak)とともに過去の漁業条約成立過程に関する研究を行い、ある資源の漁獲国数が増加するとその資源を管理するための国際約束が成立しやすくなること、逆に、公海にも分布している重要魚種(例えばタチウオ)あっても、漁業国が1カ国が主として漁獲している場合は国際約束は成立しないことを見出し、Marine Policy誌で出版した。
都留(上智大):国家管轄権外の生物多様性をめぐる制度間の相互作用について引き続き研究を行った。また、海洋法と政策に関する会合(マドリッド)に出席し、“International Interplay on Marine Biodiversity beyond National Jurisdiction: Another New Agreement?”との講演を行った。ここでなされた国連海洋法条約発効から20年との議論の状況も調査した。
堀(高知大):2014年4月に世界銀行とオランダ政府がハーグで開催した「Global Oceans Action Summit」において研究内容をポスター発表するとともに、各国の研究状況を調査した。また、IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム)の状況についても昨年に引き続き調査をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度は、本研究の成果を査読付き原著論文を国際誌に2編、また総説・雑文を2編出版し、更には学会等における口頭発表・ポスター発表・招待講演は8件程度実施した。 具体的には、査読付き論文としては以下のとおりとなっている:(1) Blasiak, R. (2015) Balloon effects reshaping global fisheries.Marine Policy 57: 18-20. および(2) Robert Blasiak, Nobuyuki Yagi, Hisashi Kurokura (2015) Impacts of Hegemony and Shifts in Dominance on Marine Capture Fisheries. Marine Policy 52: 52-58. また、総説・雑文は次の通りである:(3) Blasiak, R. (2014) Hegemons: Leaders or barriers to sustainable fisheries management? Our World. United Nations University. Tokyo, Japan. (http://ourworld.unu.edu/en/hegemons-leaders-or-barriers-to-sustainable-fisheries-management):(4) 八木信行 (2014). 反捕鯨国を勝たせた国際司法裁判判決の不合理. 正論. 2014年6月号: 308-317. これらは内容的にも国際漁業や海洋環境に関する問題の発生や合意について分析したもので、当初計画にある内容を的確に遂行し、順調に研究が進展している状況といえる。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度以降は、研究代表者(八木)は、引き続き国連における国連海洋法条約および国家管轄外の生物多様性保全問題における合意形成の状況を調査する。特に国連では、2015年1月の会合で、国家管轄外の生物多様性について法的拘束力がある枠組みを策定するための交渉を開始することを合意したため、このプロセスは重要な研究課題となる。またIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム)では科学者・専門家が作成した原案がどのように全体会合で外交官などが合意をするのかが研究課題となっているところ、これについても参与観察や文献調査を通じて、合意形成の特徴を明らかにする作業を行う。また、都留(上智大)も、国家管轄権外の生物多様性をめぐる制度間の相互作用について研究を行う。 この際、海洋の特殊性が存在するのかどうかについて特に注目して分析を行い、他の研究計画班などに研究結果をインプットできるように努めることで、領域全体の研究進展にも寄与することとする。
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