研究領域 | 新海洋像:その機能と持続的利用 |
研究課題/領域番号 |
24121011
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松浦 正浩 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 特任准教授 (70456101)
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研究分担者 |
長谷 知治 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 客員研究員 (20533699)
西本 健太郎 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (50600227)
許 淑娟 立教大学, 法学部, 准教授 (90533703)
村上 裕一 北海道大学, 大学院公共政策学連携研究部, 准教授 (50647039)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 海洋科学 / ガバナンス / 科学技術政策 / 国際法 / 事例研究 / 地球温暖化 / BBNJ |
研究実績の概要 |
本研究は、科学的検討と有機的な相互作用を実現しうる海洋ガバナンスの姿を検討するものである。平成27年度は、制度的な視点から、複数の国際条約体制における科学的知見の位置づけに関する比較検討、BBNJ条約に関する予備的調査、行政学の視点から規制評価や体制についての検討、パリ協定等に向けた政府内の実際の地球温暖化対策策定過程に基づく検討、そして政策シミュレーションを用いた実証的な検討を行った。これまでの検討の結果、体制面での特徴と、意思決定における科学的知見の位置づけについていくつかの知見が得られた。 体制面では、国際条約等において科学的機関を明示的に実行体制の一部分に位置づける事例が多くあるが、研究者等の組織に対しMOUを結んで委嘱する方法論もあり得る。国内では、審議会のほか、アドホックな部会や委員会等も同様の役割を果たしている。また、非公式な科学的知見の供給も重要な役割を果たしうる。海洋法条約のように憲章的役割を果たす枠組みでは参照事項により最新の科学的知見を反映する余地を残すことも有効である。 意思決定における科学的知見の位置づけは、科学的知見が意思決定に対しどのような影響力、拘束力を具体的に持ちうるのかについて曖昧さが残されている。また、科学的機関等の役割を、意思決定機関からの要請に基づく科学的知見の提供に限定するかどうかは選択の幅がある。また、科学的知見の反映を通じて政治的影響力を行使された結果、規制等が利害関係者に囚虜されるリスクについて十分に注意が必要である。さらに不確実性が高い状況では、順応的管理の方法論を導入することが適切な場合もある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画どおり、過年度までの事例研究を踏まえ、政策シミュレーションを含め、ガバナンスのメカニズムに求められる機能の研究を開始することが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、本研究の最終年度として、過年度の事例研究の成果をもとに、新海洋像の文脈における海洋科学と意味ある応答を実現する海洋ガバナンスの具体像について、より詳細な検討を行うとともに、とりまとめ作業を進める。 具体的には、既存の環境・資源管理のための制度及び条約一般を対象に、国際制度及び条約体制が必要な科学的知見をどのように取り込んでいるのかについて、制度論的な観点からの整理・検討を踏まえたうえで、社会実装につながる知見を検討する。海洋に直接関係する条約体制としては、地域的漁業管理機関(RFMO)のあり方にも多様性が見られるので、RFMOの横断的な検討を実施する予定である。 また、BBNJに関する議論の中で、必要な科学的知見はいかなるものか、科学委員会は必要かといった議論がある。とくに、BBNJ条約をめぐる科学と政策の連携に関する法的問題、つまり国家管轄権外の海域における生物多様性を人類共通の財産として保全することの法的意義、国家管轄権外の海域における海洋保護区の設定における問題点などについて検討することができる。このような検討結果を踏まえ、BBNJの今後に向けた議論に貢献する可能性がある。 また、IMOにおける国際海運に係る環境規制の制定過程及びそれに対する日本の検討や法令制定等の政策決定過程に必要な科学的知見の活用について、環境対策を事例に、他モードとの比較や内外の比較、政治との関係等これまでの研究成果を基に一定の整理及び一般化を行い、政策的含意を導く予定である。 さらに、海洋鉄散布に続き、BBNJ条約などより不確実性の高い将来的課題を対象とした政策交渉シミュレーションを作成し、被験者を対象とした実証実験を実施する予定もある。 また平成28年度は最終年度であることから、これまでの成果を総括するシンポジウムを開催するとともに、とりまとめ報告書の原稿の執筆と編集も行う。
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