研究領域 | 新興国の政治と経済発展の相互作用パターンの解明 |
研究課題/領域番号 |
25101002
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研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
園部 哲史 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (70254133)
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研究分担者 |
Munro Alistair 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (10515654)
大塚 啓二郎 神戸大学, 社会システムイノベーションセンター, 特命教授 (50145653)
山内 慎子 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (50583374)
松本 朋哉 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (80420305)
Estudillo J P 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (90456343)
木島 陽子 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (70401718)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 新興国 / 経済発展 / 中所得の罠 |
研究実績の概要 |
本研究班では、新興国経済の発展段階に見られる共通の経済現象に関して、ミクロ経済学的な視点から、主に個人・家計・企業などを対象に独自に収集したデータを用いて実証分析を行っている。平成28年度予算で実施した調査(翌年度へ繰越した分を含む)は主に以下の通りである。 1)森林管理と土地所有制度に関する研究:中国政府は自然資源の荒廃に歯止めをかけるために、森林の個人所有を奨励しつつあるが、森林は共有地的性質が強く、他の国々では近隣住民による共同所有制度が一般的である。私有制度と共有制度のどちらが森林保全に有効なのか、両形態の所有制度の森林が並存する雲南省で調査を実施し検証を行なった。 2)行政官の行政能力に関する研究:多くの新興国においてインフラ整備、土地制度改革、教育改革の重要性が叫ばれているが、改革は遅々として進んでいない。原因の一つとして行政能力の不足が指摘されているが、その実態はわかっていない。そこで、職場でしばしば観察される職員同士の意思疎通の不徹底及び協調行動の失敗に着目し、ウガンダ及びバングラデシュで行政官を対象に調査を実施し、その原因を検証した。 3)出稼ぎ労働に関する研究:多くの新興国ではアパレル産業などの軽工業の成長を基軸として、急速な構造変化が起きている。そうした産業では出稼ぎ労働者の都市近郊での雇用が大幅に増えている。都市部の労働市場の大きな変化が、農村家計の教育投資そして職業選択と所得へ与える影響を検証するために、バングラデシュの工場労働者及びその出身家計を対象に調査を実施した。 4)中小零細企業調査:新興国では、発展が比較的遅れている部門が成長の足を引っ張り、その国を中所得国の罠に導く恐れがあるという説がある。そうした部門の一つである中小零細企業部門で、企業経営教育がいかに企業業績を改善させるかを計測するために、ベトナムの中小企業を対象に社会実験及び調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究班は、調査データに基づいた実証研究を行い、その成果を国際学術雑誌等に掲載し、研究結果を広く世界に発信していくことを目的としている。こうした目的に照らすと、達成度を評価する基準は、1)調査の実施状況、2)分析および研究の質と進捗状況、3)成果の発信状況の3点に集約されよう。 まず、(1)に関しては、平成28年度に実施予定していたいくつかの調査プロジェクトを翌年度に繰越すこととなったが、平成29年度に仕切り直し、ほぼ当初計画通りに実施することができた。次に(2)に関しては、平成28年度には、月例の論文報告会を10回実施して随時研究成果を報告し、研究の質および進捗状況を確認している。12月には国際ワークショップ(Hayami Conference)を開催し、本研究班の研究者が中心となって研究成果を報告し、意見の交換を通じて論文の質の向上を図った。更に、本領域研究の他班と共催で行われる研究会において、他分野の研究者との活発なインタラクションを通じ、より学際的な研究へと発展するように努めた。 最後に(3)に関しては、平成28年の本領域研究班の成果物として、研究代表者および研究分担者による査読付き国際学術雑誌への論文の掲載実績は、11本、著書・編著が4冊、国際学会等での研究報告が、5回となっている。それらに加え、国際学雑誌への投稿中の論文も複数あり、近い将来それらの多くが掲載されることを期待される。こうした成果物は、本プロジェクトのウェブサイト上(www3.grips.ac.jp/~esp)で随時報告し、本プロジェクトに関心のある研究者・実務家に対し、情報を発信することを心がけている。以上の点からプロジェクト全体として概ね順調に進展しているといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトで計画していた現地調査は全てすでに完了した。平成30年度は、本領域研究の集大成である「新興国研究」に関する英文叢書を完成させることに加え、これまでに収集したデータの分析及び論文の執筆を継続しその成果を国際学術雑誌等に掲載し、これまで以上に研究結果を広く世界に発信していくことに注力する。
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