研究領域 | 新興国の政治と経済発展の相互作用パターンの解明 |
研究課題/領域番号 |
25101003
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
戸堂 康之 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30336507)
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研究分担者 |
堀田 昌英 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (50332573)
鈴木 綾 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (20537138)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 社会ネットワーク / 経済発展 / 新興国 |
研究実績の概要 |
本研究は、「地域内・国内の社会ネットワークが密であることが政治的な排他主義を生み、よそ者とのつながりを排除することがある」との仮説を、新興国のフィールド調査によって収集するデータなどによって検証するものである。2015年度は、ベトナムで大規模な企業調査および社会実験を行ってデータを収集した。その上で、ベトナム、インドネシア、フィリピン、エチオピアにおける独自の調査を基にしたデータ、日本のサプライチェーンを網羅した大規模な企業データなどを用いて以下のような研究を行った。 (1)ベトナムの衣料産業における中小零細企業のデータを用いて、輸出振興のためのビジネスセミナーが企業の輸出行動や輸出に対する意識に変化をもたらさなかったことを見出した。これは、新興国の発展途上にある中小企業がグローバル化するには、輸出に関する情報を与えるだけでは不十分で、生産性そのものを向上させる必要があることを示唆している。また、ある企業のセミナーへの参加は、その情報交換相手の企業が参加することで促進されることが示された。このようなピア効果がある場合には、複数均衡があるため、様々な発展経路があることが示唆される。 (2)日本のデータによって、企業は遠方の企業と取引があったときにより生産性や技術革新力が大きいことが見出された。これは新興国の分析ではないが、よそ者とのつながりが技術伝播やイノベーションにとって重要であることを示唆しており、新興国企業の発展に対して大きな示唆を与えるものである。 この他、中国の対内投資、エチオピアの農業技術伝播や労働市場において、ミクロデータを利用して、様々なネットワークがどのように個人や企業のパフォーマンスに影響しているかを分析した。これらの業績は、学会で発表され、国際学術誌に掲載された。まだ国際学術誌に掲載されていないものは、今後投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度の研究実施計画としてあげた6テーマのうち、(1)インドネシア製造業、(2)ベトナム中小企業、(3)日本のサプライチェーンについては、順調に成果が出ている。(4)のフィリピンのごみ収集人の研究についても、研究業績で示すように学会発表を行っている。(5)(6)については、まだ業績が形にはなっていないが、順調にデータ収集、社会実験を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、インドネシアとベトナムで収集したデータ、および新興国を含む世界のサプライチェーンに関する企業データを重点的に分析する。また、これまでの研究でわかった課題をさらに深く分析するために、新しく調査および社会実験を新興国(エチオピアなど近年高成長をとげている開発途上国を含む)で行っていく。
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