研究領域 | 新興国の政治と経済発展の相互作用パターンの解明 |
研究課題/領域番号 |
25101006
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研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
恒川 惠市 政策研究大学院大学, 政策研究科, 特別教授 (80134401)
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研究分担者 |
佐藤 百合 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 上席主任研究員 (00450453)
本名 純 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (10330010)
クー ブー・テック 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (10599385)
熊谷 聡 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (20450504)
峯 陽一 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (30257589)
磯崎 典世 学習院大学, 法学部, 教授 (30272470)
末廣 昭 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60196681)
インタラカムナード ピー 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (70639913)
玉田 芳史 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90197567)
川村 晃一 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (90450501)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 政治学 / 経済政策 / 社会福祉関係 / 新興国 / ポリティカル・エコノミー / 中所得国の罠 / 民主化 |
研究実績の概要 |
本年度は、新しい学術領域として「新興国研究」を確立するという最終目標に向けて研究班全体の研究の集約を図る試みを開始した。そのために、2度にわたって国際ワークショップを開催した。このワークショップは、対象地域を東南アジアに限り、テーマも「中所得国の罠」と呼ばれる経済成長率の鈍化と、それにともなう政治的・社会的問題に絞った。2回のワークショップを通じて明らかになったことは、東南アジア諸国はまだ「罠」と呼べるような長期的な経済停滞には陥っていないこと、経済成長を維持する上で、産業技術と産業構造の高度化ばかりでなく、国内産の天然資源を使う加工業、および国内市場・地域市場についての知識や国内の人的資源を生かした製造業やサービス業の拡大も貢献できることである。ただし、産業技術や産業構造が低位にとどまり、天然資源の開発輸出に依存しすぎることの危険性も指摘された。他方、一部の国では社会的要求や政治的開放化の動きが強まっており、これらへの対応の遅れが経済成長の継続に悪影響を及ぼしつつあることも明らかになった。 本計画研究は、新学術領域研究全体の中での自らの位置づけを明確にするために、時間軸と対象地域を拡大する分析もおこなった。この分析では新興(emerging)をcatching-upとして理解する視点から、19世紀初頭以来の世界各国の動向を分析した。その結果、かつての「新興国」の中には、途中で停滞期を経験しつつも成長を続けて「先進国」になった国と、「中所得国の罠」と呼びうる長期停滞に陥った国があることが明らかになった。東南アジア諸国を含むアジア諸国は、今までのところ急速なcatching-upを継続しているが、アジア諸国が先進国と同じレベルに収斂していくか、先進国を上回る経済力を持つまで成長できるか、あるいはその前に「中所得国の罠」に陥るか、予測は難しい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、本計画参加者は各自現地調査を含む研究を進めると同時に、6回の研究集会において研究経過と結果を共有した。この研究集会には海外から3名(インド、シンガポール、タイ各1)の専門家を招聘して、その知見を吸収した。 これも当初計画通り、若手の新興国研究者を養成し、同時に研究班が手薄な地域をカバーするために、次世代研究者会議を立ち上げ、上の研究集会とは別に3回の研究会を組織した。さらに4名の若手研究者(中国研究2、ブラジル1、インドネシア1)を現地調査のために派遣した。 以上の他、個々の研究分担者の研究を比較し、「新興国研究」として統合することを目的として、東南アジアに的を絞った国際ワークショップを2度組織した。このワークショップでは研究分担者5名、公募研究者1名に加えて、本研究計画をその一部とする「新学術領域研究(研究領域提案型)」の他班から2名が報告をおこなった。この国際ワークショップの結果は、本研究の中間報告書として英文出版の準備を進めている。 以上の研究の結果、途上国から新興国への成長は、様々なプレイヤー間の利害調整による市場の予測可能性の確保と、競争による予測可能性の制限というトレードオフの調整を(時には意図せざる)様々な方法で長期間実現できたときに起こること、新興国から先進国への成長は、複雑化した社会的利害を調整することで、「中所得国の罠」を避け、社会福祉制度を整備し、民主主義的な政治秩序を形成することが枢要な条件であることが明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
①昨年度実施した国際シンポジウムの結果を本研究の中間報告書として英文出版するための準備を進める。 ②研究分担者は、自分の研究が「新興国研究」の中で占める位置を確認しつつ、各自の分担テーマについての研究を進めるとともに、最低2ヶ月に1回開催する研究集会において、研究結果を報告しあう。研究分担者によってはカバーできない国・地域やテーマについては、内外の専門家を招いて、その知見を吸収する。 ③昨年度に引き続き、若手研究者の現地調査を支援し、次世代研究者会議を開催する。世代間の交流を図るために、②の研究集会と合同の研究会も開催する。 ④研究分担者は、最終報告書の作成に向けて、第一次草稿の執筆を開始する。
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