研究領域 | 生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現 |
研究課題/領域番号 |
25102004
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
寺嶋 正秀 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00188674)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 分子間相互作用 / 情報伝達 / 時間分解 / 拡散 / 熱力学 |
研究実績の概要 |
タンパク質の分間相互作用は、生体分子が生命活動を行う上で欠かせないものであり、信号伝達や酵素反応などで大きな役割を果たす。例えば、他の分子との分子間相互作用を変化させることで、ネットワークが形成され、それが信号伝達となって下流分子に情報が受け渡され、生理活性を生むように、作られては解離し、解離しては会合するような動的な秩序が本質的に重要である。こうしたシステムを解明するため、分子間相互作用を時間分解で検出する試みを行う。特に、過渡回折格子法をベースにして、新しい信号解析法の開発と、高感度化などを組み合わせて、タンパク質会合・解離過程を高時間分解能で検出する手法の開発を行う。本年度は、光センサータンパク質をモデルにして会合・解離反応の時間変化を分子レベルで明らかとした。具体的には、PixDと呼ばれる光センサータンパク質を用いて、その機能に関係する反応機構を分子間相互作用変化と関連付けて時間分解で検出することに成功した。特に、その10 量体と5 量体の動的平衡と光照射による会合変化の分子論的原因を時間分解熱力学法で調べ、揺らぎと会合状態変化との関連を明らかにした。またその他にも、YtvA と呼ばれる、光や温度・塩などの生体ストレスを感知し、転写因子σB の活性を制御するタンパク質の制御機構ネットワークを時間分解で調べ、光励起によって特徴的に分子間相互作用が変化することがわかった。これは後続反応解明への第一歩となる。また、オーレオクロムと呼ばれるタンパク質とDNAとの相互作用を時間分解で検出するための試みを行った。更に、ストップドフローシステムでフローする流量が少なくて済むセルを開発して、我々が開発してきた過渡回折格子測定装置の中に組み込む試みをした。このシステムの時間分解能を探り、大体1ミリ秒で拡散過程が検出できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ストップドフローシステムの改良を行った。また、幾つかの光センサータンパク質において、タンパク質間相互作用を時間分解で観測することに成功し、揺らぎとの関係を明らかにした。特にフォトトロピンにおいてドメイン間相互作用とどのように関係しているか、その変化が如何にして次のネットワークに組み込まれていくかの詳細を明らかにすることに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続いて、分子間相互作用の時間分解検出を行うシステム構築とタンパク質反応への適用を行う。特に計画の変更などはない。
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