生体機能の分子論的描像を明らかにするために、生体分子の分間相互作用を時間分解で検出する試みを行った。特に、過渡回折格子法をベースにして、新しい信号解析法の開発と生体分子の会合・解離過程を高時間分解能で検出した。本年度は、ドメイン間相互作用とタンパク質-DNA相互作用を時間分解検出する以下のような成果を得た。 まず、植物の持つ青色センサーとして興味の持たれているフォトトロピンの反応ダイナミクスについて、LOVドメインとキナーゼドメイン間がどのように変化するかを時間分解検出した。その結果、LOVドメインの光励起によってキナーゼドメインはLOVドメインから離れるなどのドメイン間相互作用が弱められることが分かったが、その動きはLOVドメインとキナーゼドメインの間を繋ぐグリンカ―と呼ばれる部位の動きで支配されていることが明らかとなった。 また、植物だけではなく微生物の光応答をコントロールしているフォトトロピンの反応も明らかにし、植物のフォトトロピンとの相違を見出した。 更に、DNA発現を光によってコントロールしているタンパク質であるEL222の反応ダイナミクスを調べ、光誘起のダイマー化反応を見出した。さらにDNAとの相互作用ダイナミクスを調べ、DNAとの結合などは会合過程ではなく解離過程で制御されているという予想外の事実を見出した。これはタンパク質が特異的なDNA配列をいかにして探し出しているかという、多くの分野に関係する本質的疑問に答える手掛かりとなるものである。
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