研究領域 | 生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現 |
研究課題/領域番号 |
25102008
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
加藤 晃一 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (20211849)
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研究分担者 |
佐藤 匡史 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80532100)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 生命分子 / 超分子 / 動的秩序 / 高次機能 / 集合離散 |
研究概要 |
初年度は、以下の2つの生命分子システムを対象として、本研究の基盤となる方法論を整備することに注力した。 (1)細胞内のタンパク質分解装置であるプロテアソームのアッセンブリーと機能発現に関わる生命分子システム 生命分子素子の動的秩序形成におけるミクロ-マクロ相関を探査するために安定同位体標識を利用したNMRと中性子小角散乱の融合研究を実施した。具体的には、古細菌由来のプロテアソーム活性化因子PbaBのホモ4量体に重水素標識を施し、それに捕捉されたモデル基質αシヌクレインの構造を逆コントラストマッチング中性子小角散乱法により選択的に観測することに成功した。一方、15N標識を施したαシヌクレインを用いて、PbaBホモ4量体と複合体形成に関わる部位のミクロ環境に関する情報を取得した。さらに、プロテアソームの分子集合に関わるアッセンブリーシャペロンNas2を対象にNMR解析とX線結晶構造解析の融合研究を展開し、本シャペロンの作動機構を解明することに成功した。 (2)細胞内および細胞表層における糖鎖認識に関わる生命分子システム 様々な時空間スケールにおける生命分子集合系のダイナミクスを原子レベルで解明するために、NMR観測を通じて得られる実験データを分子動力学(MD)シミュレーションと統合的に解析することによって、多分岐糖鎖の立体構造ダイナミクスを探査するためのアプローチ法を開拓した。安定同位体標識とランタニドイオン導入を利用して観測した常磁性効果に基づく糖鎖のNMRスペクトル変化を、拡張アンサンブル法を用いたMD計算から導かれる結果と比較することを通じて、糖鎖の3次元構造動態を定量的に評価することを可能とした。また、糖タンパク質の細胞内輸送装置を構成するレクチンを対象とした構造解析により、その糖鎖認識のダイナミクスを原子分解能で明らかにすることにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究成果は当初の予想を越えた広がりを示し、プロテアソームアッセンブリーシャペロンの2量体形成を阻害する化合物の作用原理の解明や先天性筋ジストロフィーの原因遺伝子産物の機能の解明に発展し、創薬や医学の領域においても興味深い知見をもたらしている。これらの成果の一部は既にマスメディアを通じて社会に発信をしている。
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今後の研究の推進方策 |
プロテアソームのアッセンブリーと機能発現に関わる生命分子システムを対象にした物理化学的計測をさらに発展させて、生命分子集団の自己組織系に内在する精緻にデザインされた不安定性をあぶり出し、機能発現にいたる時空間的展開の原理を理解することを目指す。 糖鎖認識システムについては、安定同位体標識を利用したNMR法による研究対象を糖脂質のクラスターに拡張し、それを舞台とするアミロイド形成の機構を探求する。 さらに、タンパク質の細胞内運命の決定に関わる生命分子集団が、溶液のpHや酸化還元状態等を感知して分子間のコミュニケーションをダイナミックに変化させるメカニズムを探索して、そのデザインルールを探る。
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