研究領域 | 生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現 |
研究課題/領域番号 |
25102010
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
稲垣 直之 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (20223216)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 神経細胞 / 軸索 / アクチン / 自己組織化 / メカノバイオロジー |
研究実績の概要 |
本研究では、神経軸索伸長のためにシグナル伝達を力に変換する分子集合体をモデルシステムとして、生体分子素子の動的な構造変化や自己組織化を起点として、時間経過とともに、力の発生、さらには高次の細胞機能へと至る機構を、in vitro、神経細胞、人工再構築系を用いた複数の階層にまたがる一連の研究を通じて解明することを目指す。 我々のこれまでの研究により、拡散性の軸索誘引分子ネトリン-1を介したシグナル伝達によりリン酸化酵素PAK1がシューティン1をリン酸化するとシューティン1がコルタクチンを介してアクチン線維と集合体を形成することが解っている。また、シューティン1がPAK1によりリン酸化されることによりシューティン1とL1-CAMの結合も促進することが解った。また、シューティン1-コルタクチン相互作用とシューティン1-L1相互作用が軸索伸長のためのシグナル→力の変換に重要な役割を果たすことが明らかとなった。さらに、超分子質量分析装置を用いたNative mass解析により、シューティン1がin vitroで2量体を構成すること、シューティン1とL1-CAMの複合体をシューティン1とL1-CAMがそれぞれ2分子、1分子からなる複合体を形成することが明らかとなった。また、シューティン1が神経細胞の細胞移動のための力の発生に関与することもわかりつつある。 そこで本年度は、シューティン1とL1-CAMの複合体が、細胞外基質上のラミニンに反応して軸索伸長のための力を生み出す仕組みを1分子計測を交えて解析した。その結果、L1-CAMが細胞外基質上のラミニンと連結したり連結が外れたりすることを繰り返すことが解った。さらに、L1-CAMが細胞外基質との連結を調節することにより軸索伸長の方向を決めることも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、シューティン1-コルタクチン相互作用とシューティン1-L1- CAM相互作用が細胞内で軸索伸長のためのシグナル→力の変換に重要な役割を果たすことを解明した。また、L1-CAMとラミニンの連結が軸索伸長の方向を決めることもわかった。さらに、シューティン1とL1-CAMがそれぞれ2分子、1分子からなる複合体を形成することも明らかとなった。このように、神経細胞の軸索伸長や細胞移動のために拡散性のシグナルに加えて細胞外基質上のシグナルを力に変換する分子集合体の実態が着実に明らかとなりつつある、したがって期待通りの研究成果を挙げることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1)シグナル→力の変換を担うシューティン1-コルタクチン-L1-CAM複合体の解析:シグナル→力の変換の場としてのシューティン1-L1-CAM集合体の集合・離散に伴う動態を、クライオ電子顕微鏡をおよびNative MS用いて解析する。まず、アクチン線維、コルタクチン、シューティン1、L1-CAMから成る分子複合体をクライオ電子顕微鏡により高解像度で観察し、その分子複合体上におけるシューティン1の立体構造を解析する。具体的な方法としては、アクチン線維と共にコルタクチン、シューティン1、L1-CAMを共沈降させ、アクチン線維、コルタクチン、シューティン1、L1-CAMの複合体のサンプルを準備する。その後、クライオ電子顕微鏡により複合体のサンプルを観察し、分子複合体上におけるシューティン1の立体構造を解析する。さらに、PAK1でリン酸化することでシューティン1を活性化させ、分子複合体上におけるシューティン1の立体構造の変化を解析する。また、Native MS用いてシューティン1の活性化に伴う複合体のストイキオメトリーの変化を解析する。これにより軸索伸長のための力発生およびシグナル→力の変換の場となる集合体の多分子レベルでの自己組織化のメカニズムの解明を目指す。
2)神経細胞におけるシューティン1の活性化と力の発生、軸索ガイダンスの解析:次に、一連の物理・化学的解析で明らかとなった微細なレベルでの分子動態と、それに伴うシューティン1-L1-CAMを含む集合体の形成が、時間発展とともに神経細胞でいかにして高次機能の発現にいたるのかを明らかにする。具体的には、軸索先端を軸索ガイダンス分子Netrin-1の濃度勾配で刺激し、軸索先端における活性型(リン酸化型)シューティン1の空間分布をリン酸化抗体を用いて解析する。また、それに伴う力の発生と軸索のガイダンスをライブイメージングで計測する。
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