研究領域 | ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立 |
研究課題/領域番号 |
25103004
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐野 雅己 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40150263)
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研究分担者 |
竹内 一将 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50622304)
笹本 智弘 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (70332640)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 非平衡ゆらぎ / 界面成長 / 自己駆動粒子 / KPZ方程式 / アクッティブマター |
研究概要 |
アクティブマターの研究に関して今年度は、理論面からは、変形しながら運動する粒子モデルに関して、乗算ノイズが生じる機構を提案した。また、単一の細胞が基板上を運動する際の法則性を調べる目的で、細胞のTraction Force Microscopyの手法を開発し、得られた応力分布のダイナミクスから応力場の多重極展開を行い、運動との相関を調べた。その結果、力の双極子成分が重心の運動する軸を決め、四重極成分が運動の向きを決めているという規則を見いだした。これにより、一見ランダムな細胞性粘菌のアメーバ運動の運動方向を予測することが可能となった。さらには、加振された粒子の濃厚懸濁液に生じるホール構造の安定性と完結的な分裂現象に関する実験を解析し、モデルを提案した。 界面成長に関して、理論面では、界面成長に見られる普遍的性質(KPZ普遍性)が、さらに広いクラスの系で見いだされる可能性についての考察を進め、結合した1次元多成分KPZ方程式をかなり一般的な枠組みで取り扱い、系に固有なあるモードにおいては、多成分KPZ方程式の2点相関関数が、長距離・長時間の領域では1成分KPZ方程式の2点相関関数と同じように振る舞うと考えられる事を示した。関連して、多成分確率的格子気体は有効的には多成分KPZ方程式で近似されること、従って多成分格子気体においても固有モードでは1成分KPZ方程式の2点相関関数が現れる事を議論し、シミュレーションにおいて確認した。実験では、KPZクラスにおける特異な時間相関を調べるため、界面ゆらぎが示す「弱いエルゴード性の破れ」に注目して研究を行った。液晶乱流実験と数値モデルにより、平面界面と円形界面のどちらにおいてもエルゴード性が弱く破れていることを発見した。乱流転移に関しては、装置を完成し、非平衡相転移仮説を検証するための測定を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己駆動する系であるアクティブマターの実験に関しては、細胞運動の機構を理解するため、測定した応力場の多重極展開のダイナミクスを見る方法を提案し、これまで不可能であった細胞の速度方向を予測することが可能となった、これは重要な成果である。さらに、変形しながら運動する系として、他の物理系とも共通するダイナミクスが明らかになりつつあり、今後さらに普遍的な理論の発展につながると期待される。 界面成長に関しても、理論、実験ともに順調に振興している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、変形しながら運動する物体の一般的な枠組みを構築するため、細胞運動、変形運動する液滴、数理モデルに関してさらに詳しく研究を進めていく。また、コロイドを使った自己駆動粒子の運動と集団挙動に関しても、流体力学的相互作用の解析や集団運動の発生条件などを明らかにしてゆく。 界面成長に関しては、相互作用するブラウン運動系や、KPZ方程式の解析で有用な双対性の拡張についての研究を進めるほか、対称性の異なる実験系や対応する相関関数の振る舞いについて研究を進めてゆく。 乱流転移の非平衡相転移仮説の検証に関しては、実験データが揃いつつあるので、近い将来に一定の結論が出せると考えている。
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