研究実績の概要 |
本研究では非平衡系ゆらぎの普遍性を示す典型的な例として、界面成長におけるゆらぎ(KPZ普遍性)において理論と実験両面での成果があり、非平衡系のミクロとマクロをつなぐアクティブマターと呼ばれる新しい研究領域においては、新現象の発見と分類等に貢献した。 成長界面の形状とゆらぎの普遍性に関する研究では、笹本はSpohnとの共同研究においては、粒子が同じ位置に来た場合に非対称な反射を行うような多数のブラウン運動粒子からなる系がKPZ普遍性を示すことを見出した。Carinci, Giardina, Redigとの共同研究においては、自己双対性を持つ広いクラスに対して議論する枠組みを構築し、その適用例としてUqSU(1,1)対称性を持つKMPモデルの一般化にあたる多粒子確率過程モデルを導入した。また、竹内はKPZクラスの顕著な特徴である初期条件依存性を調査するため、液晶乱流界面の初期条件を任意に制御可能な実験系を製作した。これにより、円から内向きに成長する界面の計測を行い、関連研究の類推に反して、それが平面界面の特徴を示すことを発見した(4)。以上の研究により、様々な非平衡現象を記述するKPZクラスの普遍ゆらぎと構造の相互関係の理解を、実験的、理論的に大きく進展させることができた。 アクティブマターの研究テーマに関して、佐野等は神経幹細胞の培養系では、運動し続ける細胞群がネマチック秩序状態を形成し、+1/2の指数を持つトポロジカル欠陥には細胞が集積し、-1/2の指数のトポロジカル欠陥では細胞密度が減少することを発見し、その振る舞いをアクティブマターを記述する方程式で再現することに成功した。また、Janus粒子を用いた系で、微生物の走化性を模した実験を行い、ゆらぎ中で目標に向かうための最適戦略を理論で明らかにした。
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