(1)コロイド二成分系において、それぞれの成分の粒子径が極端に異なるときには、各成分が独立に、そして逐次的にガラス転移を起こすと考えられるが、このような階層性を記述する統計力学理論はなかった。我々はレプリカ理論を拡張し、階層的なガラス転移を説明する理論を構築した。 (2)ランダムピニング系は、シミュレーションで到達できる温度領域で理想ガラス転移を起こす特殊な系である。我々は理想ガラス相における残留エントロピーとダイナミクスを精密に計算し、metabasin中のダイナミクスが残っていること、ランドスケープの階層性に由来する残留エントロピーが有限であることを見出した。 (3)剛体球ガラスの力学的摂動に対する安定性と可逆性について、シミュレーションに基づく詳細な解析を行った。まずスワップ・モンテカルロ法によって高密度まで熱平衡化した過冷却液体状態を準備し、そこから非常に安定なガラスを生成した。その結果、安定なガラス状態は、剪断によってシアジャミングを示しうることを見出した。シアジャミングに至らない場合、シアひずみが十分大きくなると系は最終的に降伏する。また、安定なガラスにサイクル状の剪断を与えると、軌道が可逆から不可逆相へ転移することがわかった。さらに、ガードナー相付近では、この可逆・不可逆性に非自明な階層構造が現れることを見出した。 (4)並進自由度と回転自由度を併せ持つ系におけるガラス転移について、無限大次元で厳密になる第一原理的なレプリカ液体論を構成した。軸対称性を仮定し、系の配位は各粒子の重心位置と回転軸の方向(スピン)で指定できるとした。パッチが全体を覆っている場合は、通常の引力コロイドガラスの問題に帰着する。解析の結果、系の相挙動は非常に多彩であることがわかった。
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