研究領域 | ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立 |
研究課題/領域番号 |
25103011
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木村 康之 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00225070)
|
研究分担者 |
水野 大介 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30452741)
|
研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
|
キーワード | マイクロレオロジー / フィードバック制御 / 光ピンセット / 流体相互作用 / ガラス状態 |
研究実績の概要 |
本年度は、様々な非熱的場により駆動されたバイオマターおよびそのモデル系のメソスケールのゆらぎと力学応答に関する以下に列挙するような研究を行った。 [1] 流体相互作用しつつ運動する微粒子系の単純なモデルとして、同一円周上を一定の駆動力を与えられて運動する多粒子系をリング光渦により実験的に実現し、この系で現れるさまざまな集団運動を研究した。 [2] 楕円体コロイド粒子は方向がランダムである配向ガラスと重心位置がランダムである通常のガラス状態の2つのガラス状態を示す系として注目されている。本年度は2次元での液体状態(面積分率50%程度)における並進秩序と配向秩序を調べた。その結果、軸比の増大とともに長軸がそろった状態であるネマチック秩序が急速に増大することがわかった。 [3] マイクロレオロジー(MR)を非平衡環境下で実行するために、流れや揺らぎに対して多重のフィードバックで追随しながら計測を行うシステムを開発した。当該システムを用いて生きている細胞内部や細胞抽出液のレオロジー計測を行った結果、細胞内部は混みあいによりガラス化するはずの濃度にありながら、代謝活性により流動化していることがわかった。 [4] 非平衡系における揺らぎは必ずしもガウス分布に収束しない。本研究では、べき的な相互作用の和として得られる極限分布の新しい解析的な表現を見出した。この新しい極限分布は、系の特徴的なサイズと相互作用源の濃度により、ガウスとレビの間を連続的に接続する。この新しい非ガウス分布の解析的表現が、現実系(遊走微生物懸濁液やアクチン/ミオシンゲル)で観測される非平衡揺らぎを定量的に説明すること実験、理論、および数値シミュレーションを用いて明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
流体相互作用する系における少数多体系の示す特徴的な運動の解明(木村)、フィードバックマイクロレオロジーによる細胞の高精度レオロジー測定(水野)、非ガウス揺らぎの起源を解明する研究(水野)を行い、それぞれの成果を学術論文、国際学会発表などを行った。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、マイクロレオロジー(MR)法を用いて、バイオマターとその複合系である細胞のメゾスケールの力学物性の測定を行う。制御された非平衡環境下におけるバイオマターの力学測定により、従来の平衡状態における巨視的力学測定では得ることのできない、新たな知見を得ることで、新しい物理的な観点から生命理解を目指す。本課題では、[1]多粒子MR測定システムを用いたバイオマターの非平衡状態のダイナミクス測定(木村)および[2]細胞の揺らぎ応答(水野)に関する研究を行う。
[1]ホログラフィック顕微鏡とホログラフィック光ピンセットを併用した、多プローブ粒子を用いた3次元passive/activeMR測定法の開発と、モデルバイオマター系の平衡および非平衡状態における空間構造とダイナミクスの相関を解明する。
[2]昨年に続き、細胞抽出液を用いて、その原形質含有量や細胞骨格の構成比を変化させてMR計測を行う。これらの計測により、細胞内部において混雑状態が生み出す物質群の特徴を特定し、それらが細胞骨格による力生成により駆動されることで、力学特性が変化する物理的機序を解明する。
|