研究領域 | ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立 |
研究課題/領域番号 |
25103012
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
吉川 研一 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80110823)
|
研究分担者 |
鶴山 竜昭 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00303842)
市川 正敏 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (40403919)
|
研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
|
キーワード | 生命物理 / 非平衡解放系 / 時空間秩序 / ソフトマター / 非線形ダイナミクス / 非平衡ゆらぎ / ゲノムDNA |
研究概要 |
非平衡開放系の特質である時空間秩序の自発的生成について、生命現象の本質的理解に重点を置きながら、本新学術研究の支援のもと研究を推進させて来ている。1)混雑環境下にあるゲノムDNAの高次構造・機能の解明: 混雑した環境下での、ゲノムDNAの振る舞いを簡単なモデル系を構築して追究した。本年の主要な成果として、負に帯電したnanoparticleによる混雑環境下で、DNAに折り畳み転移が生じていることを見出したことがあげられる。更に重要なこととして、nanoparticleによるDNAの凝縮体は、helix-coil転移の転移温度が低くなることも見出している。一般に、DNA凝縮体は、helix-coil転移の転移温度は高温側に移行するが、これとは逆の傾向であり、混雑環境がDNAの特質にこれまで知られていなかったような影響を与えていることが今回の研究により明らかとなった。 2)細胞サイズ液滴の示す特異な動的挙動:定常的な直流電場のもとでの、液滴の規則的な運動 についての研究を展開した。対向針電極の間に油中水滴を置き、電極に直流電圧を掛けると、液滴球が電極によって帯電し、静電反発する事で対面の電極に飛ばされ、対面の電極で逆荷電を受けとり再び反発する事で、それを繰り返す。低次の対称性を考慮した水滴の運動方程式を立て、安定状態から振動状態への分岐を線形安定性解析すると、ホップ分岐の線がV に対して Lの1.5乗 という、非自明なスケーリング則を取る事が導かれた(V電圧、L電極間距離)。3)組織・個体レベルでの形態ゆらぎと病態: 定量的Morphometryによる細胞の自動形態定量プログラムにより、形態ゆらぎの定量的な評価を診断に応用した。成果として肺癌形態と遺伝子変異の関係、間質性肺炎の定量評価、超急性心筋梗塞の診断マーカーSORBS2の発見、皮膚自己免疫疾患の乾癬の病態を血液細胞(リンパ球)の分布、活性化による形態の変化、遺伝子発現と相関を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画はおおむね順調に進展しており、それに付け加えて、予想外の重要な発見や研究の新たな進展が見られている。例えば、負に帯電したnanoparticleが、やはり負に帯電しているDNAを凝縮することを、世界に先駆けて見出している。また、直流電場のもとでの自律的なリズム運動が、外部からのゆらぎにより安定化することを、実験・理論両面から明らかにしてきている。
|
今後の研究の推進方策 |
過年度に引き続き、生命現象の階層に対応して、1)分子レベル(ゲノムDNA)、2)細胞レベル、3)組織や個体レベル、の研究を並列的にすすめ、かつ階層横断的なアプローチも重視する。本年は、特に、実験と理論の融合と、分担者の鶴山の臨床医学的な対象についての、物理的な側面を重視した研究を推進する予定である。
|