研究領域 | 理論と実験の協奏による柔らかな分子系の機能の科学 |
研究課題/領域番号 |
25104003
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森田 明弘 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70252418)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 界面分光 / 分子動力学シミュレーション / 差スペクトル |
研究概要 |
申請者がこれまでに開発してきた分子シミュレーションに基づく界面分光の理論の成果をもとに、分光計測の実験研究者との共同研究を展開し、溶液・高分子などの柔らかな界面構造の理解を格段に深化させる。本年度はそのために我々の提唱した和周波分光の理論計算の適用範囲を大幅に拡げる高速なSFG 計算プログラムを開発した。これは従来よりも格段に汎用性が高いプログラムで、さらに並列化とチューニングを進めて、これまでよりも10-20倍程度の高速化を実現した。今後のさまざまな系に対する分光解析のためのプラットフォームを確立した。 また、微小な赤外吸収の差スペクトルを計算可能とする新たな計算手法を開発した。赤外吸収の差スペクトルは実験的に広く用いられている解析手法であるが、理論計算によって2つのスペクトルの差を求めることは、非常に大きな統計平均を必要とする困難な問題であった。本手法ではスペクトルを計算して差を求めるのではなく、差スペクトル自体を直接計算する新たな理論手法を開発し、差スペクトルの計算コストを従来よりも何桁も減少させることを可能とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本領域の当初年度として、分光理論の計算にとって必要な界面和周波分光の汎用ソフトウェアを完成させた。これは次年度以降に実験研究者との共同研究によって界面構造と和周波スペクトルの解明に応用していくことを普及していくことを可能とするものである。 また、研究提案で掲げた赤外差スペクトルの理論を提案し、実際に正確で圧倒的に高速な差スペクトルの計算を可能とすることを実証した。これら理論開発の新展開は、振動分光に基づく本領域内での新たな共同研究を誘起する。当初年度として、計画時のねらい通り理論および計算手法の基礎を確立することができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後和周波発生スペクトルの汎用プログラムをもとに、固液界面系の応用を進める。また界面のダイナミックスの界面のため、2次元和周波発生分光の理論開発を進める。また本年度に開発した振動差スペクトルの理論計算手法を水溶液系に拡張し、疎水性水和殻や電極界面など多くの分光測定の解析に応用する。 さらに溶液界面構造の詳細な理解に基づいて、柔らかな界面での物質移動の機能を分子科学の立場から解明する。従来の平均場の描像では捉えられなかった液液界面のミクロな構造ゆらぎの効果を理論的に明確化し、物質移動に与える影響を明らかにする。さらに分子レベルの界面構造とメソスケールの電気二重層構造を同時に考慮して、空間の広いスケールで界面物質移動の自由エネルギーの全貌を明らかにする理論を開発する。
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