計画研究
本年度は第一に高時間分解能の一分子蛍光観察装置を開発し、タンパク質の高速運動を観察した。第二に、発ガン制御タンパク質であるp53のDNA 上における運動の解析を行った。第三に、蛍光相関分光法を用いて血清中におけるタンパク質の集合状態の解析を可能にした。1.高時間分解一分子蛍光分光法によるタンパク質の高速ダイナミクスの観察。ハイブリッド光検出器(HPD)を用いた高時間分解能一分子蛍光観察装置を開発し、5ミリ秒以上連続して10マイクロ秒の時間分解能における一分子蛍光観察を可能にした。一分子蛍光観察法を用いてF1-ATPaseのγサブユニットの回転運動に伴うαβサブユニットの構造変化を追跡した。2.発ガン制御タンパク質p53のDNA上における一次元拡散運動の解析。我々は、これまでの研究でp53が行うDNA上における拡散運動がMg2+などの二価カチオン濃度に大きく依存することを見いだした。p53の持つドメイン構造を切り出すことで、二価カチオン濃度依存性が発現する機構を調べた。その結果、C末端ドメインが二価カチオン濃度依存性の制御に重要な役割を果たすことを見いだした。p53が持つリンカー領域は、複数のドメインをつなぐだけの役割を持つと考えられてきた。リンカーの長さやアミノ酸配列を変えた変異体の解析を行った結果、リンカー領域がDNAの非特異配列と直接相互作用することで、p53の一次元拡散運動を制御することを見いだした。p53が異なるストランド間を乗り移る運動を解析し、この過程が拡散律速運動に近い速い時定数で起こることを見いだした。3.蛍光相関分光法を用いたタンパク質の会合状態の解析。HPDを用いた蛍光相関分光観測装置を構築した。装置を用いてガンの転移に関与するSAA3の会合状態を緩衝溶液中と血清中において調べ、両条件において試料が4量体を維持することを確定した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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