| 研究領域 | 理論と実験の協奏による柔らかな分子系の機能の科学 |
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| 研究課題/領域番号 |
25104008
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| 研究機関 | 東京工業大学 |
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研究代表者 |
藤井 正明 東京工業大学, ソリューション研究機構, 教授 (60181319)
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| 研究分担者 |
宮崎 充彦 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (00378598)
石内 俊一 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (40338257)
石川 春樹 北里大学, 理学部, 教授 (80261551)
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| 研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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| キーワード | 分子分光 / レーザー分光 / 原子・分子物理 / 分子クラスター |
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| 研究実績の概要 |
種々のポリペプチドや有機ソフト系分子集合体などに気相分光の手法を適用するためには、それらを安定かつ極低温状態で真空中に取り出す必要がある。これまでレーザー脱離法と超音速ジェットを組み合わせた方法を用いてきたが、これは中性分子に適した方法であり、イオン種にはエレクトロスプレー法が適している。エレクトロスプレー法では室温のイオンが生成するため、イオンを真空中に導入した後、極低温に冷却する必要がある。そこで、昨年度、エレクトロスプレー法と冷却イオントラップを組み合わせた新規質量分析装置を設計した。本年度は、これを元に種々のイオン光学コンポーネントを製作し、既存装置と組み合わせて装置全体を立ち上げた。装置の最適化を行うために、これまでレーザー脱離・超音速ジェット法で中性状態を研究してきたアミノ酸やペプチドのプロトン付加体の紫外光解離スペクトルを測定し、それらの極低温状態の電子スペクトルの観測に成功した。
それと並行して、従来のレーザー脱離・超音速ジェット法を用いて、アドレナリン受容体タンパク質のアドレナリン結合部位の部分ペプチドのコンフォマーを選択した赤外スペクトルを測定し構造研究を行った。この部分ペプチドはもともとタンパク質のα-ヘリックス部に存在するが、気相中ではペプチドの末端を修飾しないとα-ヘリックス構造をとらないが、適切に修飾することで真空中でもα-ヘリックス構造をとることが明らかになった。構造解析には、測定した赤外スペクトルの理論解析が必要であるが、班友の八木らとともに行い、レプリカ交換分子動力学法、クラスター解析法及び非調和振動解析法を組み合わせることで、高精度に真空中のペプチドの構造帰属を行う方法を確立した。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規質量分析装置の立ち上げは途中で設計変更があったため、進捗の遅れが心配されたが、何とか年度内に立ち上げることができた。最適化した結果、非常に高い感度を有していることが分かった。今後種々の生体分子や有機ソフト系超分子などへの展開が期待される。なお、設計変更の結果、予定外の購入物品が発生したため、本来予定していた４重極質量分析器用のRF電源は次年度購入することにした。その代わりに、既存のRF電源を用いたが、これは高分子量には対応できないため次年度の新規電源の購入は不可欠であるが、装置の立ち上げには十分な性能を有しており、当初の目標達成には支障がなかった。
ペプチドの構造研究については、その理論解析が実験家の手にあまるところであり、共同研究を通して速やかに進展することができた。また、自前でペプチドを合成することができるため、研究の進捗に合わせて種々の化学修飾を速やかに行うことができ、末端の修飾次第で真空中でもα-ヘリックス構造を実現できることを見出すことができた。
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| 今後の研究の推進方策 |
今年度立ち上げたエレクトロスプレー・冷却イオントラップ質量分析装置を用いて、種々のペプチドや有機ソフト系分子複合体の構造研究を行う。また、水分子を段階的に付加したクラスターを生成し、柔らかい分子の構造に対する水和効果を分子レベルで明らかにする。有機ソフト系分子についてはA03項目から供与を受け、また、理論解析についてはA01項目と共同研究を進める。
また、真空中の柔らかい分子に対して、レーザー光を照射し加熱することで、コンフォメーション変換が起こるかを検討する。これにより、レーザーによるコンフォメーション制御の可能性と、また柔らかさを決定づける遷移状態付近のポテンシャルに関する情報が得られることが期待される。
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