計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
多くの生体分子は共通の構造をもとに多彩な機能を演出しており、例えばロドプシンは共通の構造構築から光センサー、ポンプ、チャネル機能が発現する。進化の中で最適化された固有の機能は固有の構造によるものと考えられがちであるが、私たちはメカニズムを研究する中でロドプシンの機能を転換することにも成功してきた。このような機能転換の達成はタンパク質の構造と機能が柔軟に共役していることを示唆する。本研究課題において我々は、機能の創造をテーマとしてロドプシンやフラビンタンパク質など光応答性タンパク質を対象とした研究を行っている。本領域がスタートする直前の4月に海洋性細菌から光駆動ナトリウムポンプを発見した(Inoue et al. Nature Commun. 2013)。これは全く予想されていなかったという点で分野に衝撃を与える成果であり、新たな機能をもった分子を自然界から見出す代表的な例となった。現在、ナトリウムポンプの基本的な物性を明らかにする研究が進行しており、実際に最初の低温赤外分光解析の論文は投稿中である。一方、光駆動のナトリウムチャネルに関しても低温赤外分光解析を行い、チャネルに特異な水素結合ネットワークが存在することを明らかにした(Ito et al. JACS 2014)。ポンプとチャネルの機能を区別する構造解析には実に興味深いものがある。また動物型と微生物型ロドプシンの性質を組み合わせたキメラタンパク質を作製することに成功した(Sasaki et al. PLOS ONE 2014)。ナトリウムポンプとともにオプトジェネティクスのツールとしても期待される。クリプトクロム・DNA光回復酵素ファミリーのタンパク質は、共通の構造構築の中にフラビンを発色団としてもつが、機能は実に多彩である。我々は赤外分光を用いた光誘起構造変化やDNA修復過程の解析をもとに、変異体の作製による機能転換の試みを進める準備が整った。
2: おおむね順調に進展している
海洋性細菌から発見した光駆動ナトリウムポンプについては、最初の低温赤外分光解析の論文を完成させることができた。また光駆動のナトリウムチャネルに関する低温赤外分光解析の論文は、化学の最高峰であるJ. Am. Chem. Soc.誌に発表することができた。一方、オリジナリティが評価される機能転換の試みとして、動物型と微生物型ロドプシンの性質を組み合わせたキメラタンパク質を作製することに成功している(Sasaki et al. PLOS ONE 2014)。これらはナトリウムポンプとともにオプトジェネティクスのツールとしても期待されている。
計画は順調に進んでおり、この方向での研究を進める。国内、国際的な共同研究や連携も重要であり、積極的に進めたいと考えている。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (76件) (うち招待講演 12件) 図書 (3件) 備考 (1件)
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