計画研究
多くの生体分子は共通の構造をもとに多彩な機能を演出しており、本研究課題において我々は、機能の発見・転換・創成をテーマとしてロドプシンやフラビンタンパク質など光応答性タンパク質を対象とした研究を行っている。平成28年度は以下の成果が得られた。ロドプシンの機能転換に関して、アミノ酸変異を用いてプロトンポンプ、ナトリウムポンプ、クロライドポンプの機能転換を達成した。本領域で最大の目標とした研究の成果であるが、興味深いことに機能転換と進化との相関が明らかになった。具体的には、進化を遡る方向の機能転換は限られた変異で達成された一方、進化に沿った方向の機能転換は変異数を増やしても実現しなかったのである。フラビンタンパク質の機能転換に関して、アミノ酸変異を用いて (6-4)光回復酵素からCPD光回復酵素への機能転換を達成した。この場合も逆方向の機能転換は限られた変異では実現せず、進化との相関が明らかになったが、本研究はA01北尾グループとの共同研究の成果である。機能の発見に関しては、海洋細菌から内向きのプロトンポンプを発見した。プロトン駆動力を解消してしまう内向きプロトンポンプが自然界に存在したことは大きな驚きであったが、様々な手法を駆使して外向きプロトンポンプと類似の構造からどのようにして逆向きの能動輸送が実現するのかを明らかにすることができた。なお、本研究はA02内橋グループとの共同研究の成果である。光駆動ナトリウムポンプKR2の研究に関しては、国内外との共同研究が進行しており、本年度もオランダとの誘導ラマン分光、東大との変異体解析、東北大との電気生理実験、横浜国大とのNMR解析(A02川村グループとの共同研究)を論文発表することができた。
1: 当初の計画以上に進展している
本領域で最大の目標とした研究として、機能転換の達成が挙げられるが、平成28年度、ロドプシンにおいてもフラビンタンパク質においても、限られた変異で機能転換を実現することができた。その結果、興味深いことに機能転換と進化との相関が明らかになった。具体的には、進化を遡る方向の機能転換は限られた変異で達成された一方、進化に沿った方向の機能転換は変異数を増やしても実現しなかったのである。ロドプシン研究の成果はJ. Biol. Chem.誌に発表したが、2016年のハイライト論文に選出された。これはJBC掲載論文の1 %以下が選出されるものであり、本成果に対する高い評価を物語っている。領域内の共同研究も活発に進んでいることも、当初の計画以上という自己評価につながった。
計画は順調に進んでおり、最終年度となる平成29年度もこの方向での研究を進める。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 5件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 9件) 学会発表 (106件) (うち国際学会 43件、 招待講演 8件)
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