計画研究
ニュートリノにおけるCP対称性の研究に向け、陽子加速器J-PARCとT2Kニュートリノビームの大強度化に向けた開発、ニュートリノ振動の感度向上のための系統誤差の改善、そしてニュートリノ振動パラメータの精密測定、を進めてきた。平成29年度は、高統計のニュートリノデータを使って、ニュートリノ振動パラメータθ23、θ13、Δm2、δCPの同時測定を行った。特にδCPの測定結果はその値が~-π/2ラジアンと決まり、CP対称性が95%の有意度で破れている兆候を観測した。高統計のニュートリノデータの取得は、J-PARC加速器の大強度(500kW)運転が実現したこと、そしてその大強度陽子ビームによるニュートリノビームの生成が行えたこと、スーパーカミオカンデの事象構成プログラムの改善により検出効率が20%増加したこと、により実現できた。さらに、陽子ビームパラメータの測定とCERN NA61実験のハドロン生成断面積の精密測定により、ニュートリノビームフラックスを高精度で予測し、ビーム起因の系統誤差が改善した。以上に加えて、ミューオンモニターの高電圧化の実現による安定したニュートリノビームのモニタリングが可能となり、更に新しいタイプのミューオンモニターの試験にも成功した。ニュートリノ反応の系統誤差を改善するために、新型ニュートリノ測定器を製作し、水標的におけるニュートリノ反応断面積を高精度(4%の精度)で測定した。その結果、水におけるニュートリノ反応の理解が進展し、ニュートリノ振動解析での系統誤差を5%のレベルに改善することができた。以上の結果を総合し、最終的にニュートリノにおけるCPの破れの兆候を95%以上の有意度で観測することに成功した。また、ニュートリノ振動パラメータθ23を世界性高精度の6%で測定し、質量2乗差Δm2を2.6%の精度で決定した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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