研究領域 | ニュートリノフロンティアの融合と進化 |
研究課題/領域番号 |
25105004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塩澤 真人 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (70272523)
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研究分担者 |
鈴木 州 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20243298)
早戸 良成 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (60321535)
横山 将志 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90362441)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | ニュートリノ振動 / 核子崩壊 / ニュートリノ天文学 |
研究実績の概要 |
本研究では、大気ニュートリノを用いた質量階層構造等のニュートリノ振動研究と、次世代基幹実験実現のための準備研究を行う。前者では「スーパーカミオカンデ」検出器において取得された高統計かつ高精度の大気ニュートリノ観測データを用いて、ニュートリノの質量階層構造の世界最高感度での研究と世代間混合の精密測定を行う。さらに後者では、次世代ニュートリノ検出器「ハイパーカミオカンデ」のための要素開発と実証試験を行う。本研究で目指すニュートリノの質量階層構造の解明は、次世代実験ハイパーカミオカンデにおける粒子・反粒子対称性の破れの発見の可能性を高め、二重ベータ崩壊実験によるニュートリノのディラック/マヨラナ性の決定可能性を明らかにする、将来の研究の重要な礎となる。 大気ニュートリノ研究では、スーパーカミオカンデにおけるニュートリノ反応の観測データから事象の情報を引き出すためのアルゴリズムの新規開発を行ってきた。特に比較的エネルギーが高く、複数粒子が生成される事象において、生成粒子の数の認識や粒子種類の識別の精度向上を目指して、観測された光の時間と光量情報を全て用いた最尤法の開発を進めた。 並行してハイパーカミオカンデ実験実現に向けた要素開発と設計最適化を進めた。より安価かつ高性能の光検出器の実現は建設費低減のために必須であり、量子効率と構造設計を改良した高感度光電子増倍管の開発を行い、試作品を製作した。その他にも安価な水密構造と漏れ検知を併せ持つ構造設計を考案した。さらに水槽内で一様な水質を実現するための給水・排水システムの最適化の研究を進めた。検出器較正系については、光源や放射線源を指定した場所に自動的に配置させる自動較正系の設計と共に試作品を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高エネルギー大気ニュートリノ事象のための新規再校正アルゴリズムの開発は当初の計画通りに進められた。ハイパーカミオカンデ実験計画のための要素開発もおおむね計画通りにすすめることができた。特に要の要素となる高感度・高性能光センサーに関しては、最初の試作品の製作が達成され、大きな進展となった。また自動較正装置の設計と製作はH26年度にずれこみつつも、達成された。
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今後の研究の推進方策 |
計画研究の進展はおおむね順調であり、今後も当初計画に沿って進めていく。 高エネルギー大気ニュートリノ事象のための新規再校正アルゴリズムの開発に関しては、スーパーカミオカンデの宇宙線データ(大気ニュートリノ信号とは独立のデータであり、解析にバイアスをかけずにアルゴリズムの試験が可能になる)を用いた性能評価と最適化を行い、実際のデータに用いるための準備を開始する。ハイパーカミオカンデ実験計画のための光センサーについては、試作品の性能評価を行い、問題点の洗い出しと設計改善に取り組む。 また平成29年度に行うハイパーカミオカンデ要素の実証試験の詳細計画作りに、早めに取り組むべきと考えている。
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