研究領域 | ニュートリノフロンティアの融合と進化 |
研究課題/領域番号 |
25105007
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
金 信弘 筑波大学, 数理物質系, 教授 (50161609)
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研究分担者 |
武内 勇司 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00375403)
吉田 拓生 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (30220651)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 宇宙背景ニュートリノ / ニュートリノ質量 / 超伝導トンネル接合素子検出器 / 宇宙赤外線背景輻射 / 左右対称模型 / SOI-STJ一体型検出器 / ハフニウムSTJ |
研究実績の概要 |
本研究では,宇宙背景ニュートリノ崩壊を探索するために,25meV程度の遠赤外線光を1光子ごとに2%の精度でエネルギーを測定できるNbとAlを超伝導素材とする超伝導トンネル接合素子(STJ)検出器と分光素子を組み合わせた観測装置の開発を行ってきた。宇宙赤外線観測ロケット実験のために,2016年度にSTJ検出器試作器で性能試験を行い,下記の項目について開発を進めてきた:Nb/Al-STJ検出器の直近に設置できる極低温0.4Kで動作するSOI技術を用いた前置増幅器の開発を行い,STJ検出器の光応答信号を70倍増幅することに成功し,信号ノイズ比を改善した。さらに,より高い信号ノイズ比を追及するために,SOI前置増幅器の改良版を試作し性能試験を行った。また,SOI前置増幅器の基板上にNb/Al-STJを作成して,SOI-STJ一体型検出器を製作した。このSOI-STJの性能試験を行った結果,STJのリーク電流が低く,十分リーク電流に対する要求を満たすことを確認した。ロケット搭載に向けて,冷凍機の試作を行った。ニュートリノ崩壊探索ロケット実験のシミュレーションを行い,ロケット搭載用極低温遠赤外線観測装置の設計を進めた。 また,将来の赤外線観測衛星搭載に向けて,よりエネルギー分解能の高いHf-STJ検出器の試作・性能試験を行った。Hf-STJのリーク電流を一桁下げることに成功し,可視光レーザーパルスに対する光応答を観測した。 これらの研究成果を国際会議等で報告し,会議での情報交換を検出器開発・実験設計の推進に反映させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,超伝導赤外線検出器の信号ノイズ比を大幅に改善して,遠赤外線光を1光子ごとに検出することを目指して開発を進めてきている。宇宙赤外線観測ロケット実験に向けて,2016年度にSTJ検出器試作器で性能試験を行い,下記の項目について開発を進めてきた:Nb/Al-STJ検出器の直近に設置できる極低温0.4Kで動作するSOI技術を用いた前置増幅器の開発を行い,STJ検出器の光応答信号を70倍増幅することに成功し,信号ノイズ比を改善した。さらに,より高い信号ノイズ比を実現するためにSOI前置増幅器の改良版を試作し性能試験を行った。また,SOI前置増幅器の基板上にNb/Al-STJを作成して,SOI-STJ一体型検出器を製作した。このSOI-STJの性能試験を行った結果,STJのリーク電流が低く,十分リーク電流に対する要求を満たすことを確認した。ロケット搭載に向けて,冷凍機の試作を行った。ニュートリノ崩壊探索ロケット実験のシミュレーションを行い,ロケット搭載用極低温遠赤外線観測装置の設計を進めた。 また,将来の赤外線観測衛星搭載に向けて,よりエネルギー分解能の高いHf-STJ検出器の試作・性能試験を行った。Hf-STJのリーク電流を一桁下げることに成功し,可視光レーザーパルスに対する光応答を観測し,その応答速度が100μs程度であることを計測した。 これらの研究成果を国際会議等で報告し,会議での情報交換を検出器開発・実験設計の推進に反映させた。
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今後の研究の推進方策 |
宇宙赤外線観測ロケット実験に向けて,2016年度に引き続いてSTJ検出器試作器で性能試験を行い,下記の5項目について開発を進める: (1)極低温で動作するSOI技術を用いた低ノイズ前置増幅器の開発を進める。2016年度に極低温0.4Kで動作するSOI増幅器でNb/Al-STJ検出器の光応答信号を増幅し,信号ノイズ比を改善することに成功したが,さらに性能を向上させたSOI前置増幅器の改良版の性能を試験する。低ノイズの増幅器の改善によってNb/Al-STJ検出器による赤外光1光子の検出を実現する。(2)遠赤外線のパルス光源を用いてNb/Al-STJ検出器の性能評価を行う。(3)ロケット実験に用いる読み出しエレクトロニクスの設計,データ通信装置の設計を完成させる。(4)多チャンネルNb/Al-STJ検出器と光学系・分光素子を組み合わせた赤外線分光装置プロトタイプの性能試験を行う。(5)2016年度に試作したロケット搭載用クライオスタットの性能試験を行う。赤外線分光装置を設置した状態でも性能を検査して,最終設計を行う。 2017年度末に,JAXA/ISASに提出する宇宙遠赤外線観測ロケット実験提案書を作成する。また,将来の赤外線観測衛星搭載に向けて,よりエネルギー分解能の高いHf-STJ検出器の試作・性能試験を行う。 グループミーティング,勉強会,研究会等を行って,情報交換を通して知識の向上を図るとともに,検出器開発計画・実験計画を練り上げ,実験準備を進め,実験提案書を作成する。研究成果は国際会議での報告および論文として発表し,会議での情報交換を検出器開発・実験設計の推進に反映させる。
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