宇宙はインフレーションで始まり、現在にいたるまでに多様な姿の時期があったとされる。素粒子であるニュートリノはその間、様々な役割を果たしてきたことがわかっている。また、ニュートリノが他の物質粒子と比較して、質量が桁違いに軽いことは、標準模型の成り立ちに関する大きなヒントであろうとされている。本研究では、ニュートリノの宇宙論的、素粒子論的考察から、物質や宇宙の起源を探ることを目的としている。 今年度は、IceCube実験により観測された超高エネルギーニュートリノが、重い暗黒物質の崩壊によるものである仮説を、ガンマ線観測の制限を考慮し、どのような理論的シナリオが可能であるかについての研究を行い、論文に発表した。また、宇宙のインフレーション直後に起こる、再加熱期にニュートリノ振動が起こり、それが宇宙のバリオン数生成を引き起こした可能性についての研究を行い、その説明が可能であることを示し、論文に発表した。その他にも、暗黒物質探索におけるミグダル効果の研究、ゲージ理論の基礎的研究など、素粒子論・宇宙論の多岐にわたる研究成果が得られた。
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