研究領域 | ナノ構造情報のフロンティア開拓-材料科学の新展開 |
研究課題/領域番号 |
25106002
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松永 克志 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20334310)
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研究分担者 |
阿部 真之 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (00362666)
中村 篤智 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20419675)
豊浦 和明 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60590172)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 異種材料表面 / 第一原理計算 / 走査プローブ顕微鏡 / 表面構造 / 点欠陥 |
研究実績の概要 |
(1)表面ナノ構造の原子レベル評価手法の開発:本プロジェクトで導入した表面ナノ構造制御装置を組み込んだNC-AFM装置の開発を進め、観察条件および試料合成条件について検討した。特に今年度は、アナターゼTiO2を主たる観察対象とし、同装置内での成膜と表面原子ステップの存在を確認することができた。Al2O3については試料合成条件の基礎的検討を行い、スパッタ条件などを明らかにした。 (2)安定表面ナノ構造の第一原理による探索:ルチル型TiO2(110)表面上のPtクラスタの吸着構造を第一原理計算で検討した。とくに今年度はPtダイマ(2原子)の研究を行った。Pt単原子と同様に、Basal酸素空孔への吸着が最も安定であることがわかった。さらに吸着時の原子配列も、電子顕微鏡観察結果を合理的に説明しうる結果であった。また、Au単原子吸着についても検討した結果、Pt単原子とは異なる表面サイトに吸着することがわかった。 (3)強誘電体界面の特異な電気特性の解明:強誘電体界面に存在する転位のナノ構造を電子顕微鏡グループとの連携で検討した。転位のバーガースベクトルは界面の結晶方位に依存するが、強誘電体は元来大きな結晶構造を有するため、転位の自己エネルギーが高くなる傾向にある。その結果、強誘電体界面において複数の部分転位に分解した複雑なナノ構造をもつことがわかった。 (4)固体イオニクスにおけるナノ構造解析:領域全体のCS課題への取り組みとして、固体イオニクスの研究についても検討した。プロトンや酸素イオン伝導性を示す複雑な金属酸化物中の、イオン伝導経路やエネルギー障壁について第一原理計算により検討した。とくに、プロトン伝導体の研究では機械学習による効率的な計算解析を実現することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NC-AFM装置自体の設置・開発はおおむね終了し、基本的な動作確認やテスト観察も終了した。今年度は、アナターゼTiO2成膜とその表面観察を実施したが、多くのテストを重ねることができた。その他、貴金属原子吸着のナノ構造解析、強誘電体界面の電気特性、固体イオニクスについても成果を発表するにまで至っており、以上のことから、おおむね順調にしているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
表面ナノ構造の原子レベル評価手法の開発では、アナターゼTiO2表面の原子分解能観察を目指す。とくに触媒特性や原子吸着特性に重要と考えられている表面酸素欠陥などの有無を観察する。貴金属原子吸着に関する研究では、現実触媒で重要な還元処理時の貴金属粒子およびその周辺のナノ構造変化についての知見を得て、触媒活性化の起源を明らかにすることに取り組みたい。強誘電体界面の研究では、界面転位のナノ構造と電気特性の関係を明らかにする。固体イオニクスの研究では、複雑な結晶構造を示す酸化物の酸素イオン伝導性を中心に検討を進める。
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