研究領域 | ナノ構造情報のフロンティア開拓-材料科学の新展開 |
研究課題/領域番号 |
25106003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柴田 直哉 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10376501)
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研究分担者 |
藤平 哲也 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00463878)
石川 亮 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20734156)
栃木 栄太 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50709483)
溝口 照康 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (70422334)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 機能元素 / STEM / 格子欠陥 / その場観察 |
研究実績の概要 |
当該年度は下記の成果が得られた。 A 原子分解能STEM 法の精密化技術の開発と応用: 原子分解能STEM観察にて問題となる弾性波を中心とした外乱を遮断するシステムを設計・整備し、その性能について検証実験を実施した。いくつかのモデル試料を対象に取得データを評価したところ、STEMの総合的な安定性が向上したことが認められ、精度の良い計測実験が可能となった。 B TEMその場観察法を用いた粒界・界面における機能元素効果の解明: TEMその場機械試験に用いる試料ステージコントローラーの導入により、その場観察実験がより精密に実施可能となった。Al2O3のその場粒界破壊実験においては、機能元素の粒界偏析の有無により粒界破面および亀裂先端の破壊挙動が大きく異なることが明らかとなった。 C 機能元素を利用した機能性ナノ構造の作製と物性評価: 他班との連携により各種モデル粒界の作製と構造評価を行った。特にイットリウム安定化ジルコニア粒界における原子分解能元素マッピングを系統的に行った結果、特定の粒界においてイットリウムの規則的な偏析構造が認められた。この特異な粒界偏析構造を理論計算により解析した結果、イットリウムと酸素空孔の相互作用が粒界構造を決定づける支配的な因子であることが明らかとなった。このことは粒界偏析構造を理解する上で重要な知見であるといえる。 D 他班とのナノ構造連携研究: 本研究領域では全体会議、公開シンポジウム、学会シンポジウム等を定期的に開催している。当班では一部のシンポジウムの運営全般を取り仕切るなど、本領域の諸活動に積極的に寄与してきた。また、他班の学生、ポスドクをはじめとする若手研究者の短期滞在を通して、議論および共同実験を実施してきた。これらにより、連携研究の円滑な遂行と人的交流・育成を図ってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A 原子分解能STEM 法の精密化技術の開発と応用、B TEMその場観察法を用いた粒界・界面における機能元素効果の解明、C 機能元素を利用した機能性ナノ構造の作製と物性評価、D 他班とのナノ構造連携研究のいずれの項目についてもおおむね計画通りに進行していると判断できる。A、Bにおいては装置性能の向上を優先させた。これは通常の計測研究の遂行に支障のない範囲で行っており、かつ装置性能向上による加速度的な研究の進展を期待したためである。
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今後の研究の推進方策 |
これまで結晶格子欠陥と機能元素を中心とした構造解析を進めるとともに、ナノ計測技術開発に取り組んできた結果、原子レベルでの粒界元素分布や粒界破壊挙動といったやや複雑な現象も解析可能であることが実証されてきた。今後はこれまで実験的に困難であった現象を対象にした解析研究に取り組む計画である。また、他班との連携を密に行うことにより、当班の解析結果に対する理論的研究や他班の研究課題に対する解析支援を遂行していきたい。
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