研究領域 | ナノ構造情報のフロンティア開拓-材料科学の新展開 |
研究課題/領域番号 |
25106006
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
谷口 尚 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (80354413)
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研究分担者 |
遊佐 斉 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (10343865)
宮川 仁 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (40552667)
吉田 英弘 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (80313021)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 高圧合成 / 新高密度相 / ワイドギャップ半導体材料 / 透明導電体 / 外場制御セラミックス焼結 / セラミックス微細構造制御 / 超硬質材料 |
研究概要 |
高圧・高温、外場制御等の合成環境のもとで新高密度相や準安定相の合成と評価を行い、新たな機能発現を目指す。理論班との連携により高圧安定相・準安定相の凍結手法の開発、構造解析班との連携で異種元素ドーピング等による新機能発現機構を解明を進める。 (1)窒化アルミニウム、窒化ホウ素結晶中へのサイズミスフィットの大きなドーピングによる新たな機能発現を理論計算、先端的STEM解析技術との連携(A01,02班)によって進め、複合欠陥形成とサイズミスフィットの度合いに応じた配位環境の安定性を明らかにした。 (2)新規透明酸化物導電体探索研究の一環として、12CaO・7Al2O3(C12A7)結晶におけるCa サイトへのSrの固溶が可能なことが理論と高圧合成実験で整合することを明らかにした。 (3)NaCl型, WC型 TaNおよびTa5N6を高圧合成し、ダイヤモンドアンビルセルを用いた放射光X線回折実験により体積弾性率を決定した。体積弾性率(K0)はそれぞれ、WC型:351 GPa, NaCl型:295 GPa,ε-TaN:318 GPa, Ta5N6:286 GPaとなった。c軸方向にプリズム型六配位の連結構造を持つWC型及びε-TaNが大きな体積弾性率を示し、線圧縮率もc軸方向に圧縮されにくい。新硬質材料の構造と体積弾性率との相関が実験的に示された。 (4)外場(応力場・電場)制御を可能とする焼結装置およびその電磁場・緻密化過程をその場計測するための装置を作製し、粒界ナノ領域の制御プロセスの開発に取り組んだ。適切な電場印加に伴い、通常よりも低温で且つごく短時間で焼結緻密化が完了するflash-sinteringプロセスの発現に成功し、緻密化素過程ならびに微細組織形成過程と電磁場エネルギー・点欠陥生成反応との相関をA01各班、A02(エ)班との連携により評価・解析した。また、応力場・電場・雰囲気制御により新たなイオン伝導性ジルコニアの製造をA03(キ)班との連携で実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サイズミスフィットの大きなドーピング環境の理論的予測と超微細構造解析による予測の検証を窒化物系硬質材料で進め、結晶中の複合欠陥の形成によるドーピングの自由度のついて重要な知見が得られた。 酸化物結晶のカチオン置換による機能探索では高圧合成結果と計算結果を比較・検討した結果、結晶相の安定性は、反応前後の体積変化からその安定性が議論可能なことが実験的に見出された。GGA近似による計算結果が定量的によい一致を示すことがわかり、計算手法が高圧プロセスによる物質探索に有用な武器となり得ることが確認された。 新規硬質材料探索の観点では、結晶構造情報から材料機能特性を把握するという研究の流れにより、超硬質相に特有な構造を見いだすことができた。 外場制御プロセスでは、新たな焼結装置の導入を進め、電場下での緻密化素過程ならびに微細組織形成過程の評価、また応力場・電場・雰囲気制御による新たなイオン伝導性ジルコニアの製造を他班との連携で実施した。 上記の進捗の鑑み、ほぼ当初の予定通り研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
硬質材料・ワイドギャップ材料へのドーピングの自由度の確保は新たな機能発現に有用であり、高圧、高温条件下でのダイヤモンドへのドーピングなど、より挑戦度の高い系にこれまでに得られた知見を展開する。 第一原理計算からCaをBaに完全置換した12BaO・7Al2O3結晶が安定であることも、予測されており、実験による検証を試み、本物質系の系統的描像を進める。別の物質系として欠陥ペロブスカイト構造をとるWO3、ReO3や、蛍石型構造のZrO2などの圧力・温度相図の検証とそれに対するキャリア濃度・応力異方性の影響を検討していく。 高圧結晶構造やそれに伴って出現する特有なナノ構造情報から、機能物性を探索する。具体的には、金属窒化系硬質物質における普遍的基本構造の追究等があげられる。また、新たな取り組みとして、高圧構造が減圧時に構造緩和により変化する構造に注目する。その際、中心対称性の喪失に伴う欠陥生成・構造微細化に着目し、更には適切なドーピング制御による光触媒機能等の特性改善が期待できる。機能元素の局所構造解析、理論予測との連携により新機能の発現とその制御手法の確立を目指す。 アルミニウム・ジルコニウム・イットリウム等の酸化物をはじめとする各種金属酸化物を対象としては、常圧~高圧・高温下における化学組成、雰囲気および外場(応力場・電場)制御焼結技術を複合的に組み合わせた粒界ナノ領域の制御プロセスの開発に引き続き取り組む。また、外場制御焼結プロセスにおける試料内の電磁場その場計測を行い、緻密化素過程との相関を評価・解析する。粒界ナノ領域の物理的描像(A01各班、A02(エ)班との連携)と、物質・電荷輸送現象や各種材料特性(A03(キ)班との連携で評価・解析)とをプロセスに反映・最適化させ、従来の焼結手法では製造することのできなかった新たな耐環境セラミックス材料の創製を目指す。
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