研究領域 | ナノ構造情報のフロンティア開拓-材料科学の新展開 |
研究課題/領域番号 |
25106007
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
太田 裕道 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (80372530)
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研究分担者 |
平松 秀典 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 准教授 (80598136)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | ナノ層 |
研究実績の概要 |
物質表面・界面の厚さ数ナノメートルの領域「ナノ層」は、不連続な原子配列によって電子・イオンが感じるポテンシャルが変化するため、バルクとは全く異なる様々な機能物性を示す。本研究領域では、ナノ構造と機能物性の相関(=ナノ構造情報)を解明し、合理的な材料創製に繋げるナノ構造情報のフロンティア開拓を目指している。この実現のためには、物質界面の厚さ数ナノメートルの領域を切り出したナノ層モデル試料が必要不可欠である。本班では、超精密薄膜合成法を駆使して原子レベルで厚さ制御されたナノ層を作製し、その新しい材料機能の探索を行うとともに、これをモデル試料として他班に提供することでナノ構造情報のフロンティア開拓を目指す。 太田Gでは、サーモクロミック材料であるVO2エピタキシャル薄膜上に、水を含むナノ多孔質C12A7ガラスをゲート絶縁体とする薄膜トランジスタ構造を作製し、金属-絶縁体転移温度のオンデマンド制御を試みた。導電率および熱電能の温度変化を計測した結果、正ゲート電界印加によりCAN薄膜中の水の電気分解が起こり、生成したH+イオンによるVO2薄膜のプロトン化が起こってVO2薄膜表面約4 nmが金属化することが分かった。現在、A01(イ)班との連携により、VO2薄膜表面のプロトン化の検証を行っている。 平松Gでは、鉄系超伝導体122型構造BaFe2As2の理想的なナノ層の作製に注力した。P添加BaFe2As2の高い臨界電流密度(Jc)化を目的として、ナノ層成長条件をより細かく見直したところ、成長速度の減少に伴って、Jcが外部磁場に対してより等方的な特性を示すことを見いだした。さらにこのナノ層試料は自己磁場中でJc=7 MA/cm2を超え、さらに9 T の高磁場下においても1 MA/cm2を超える値を示した。この9 T下のJc値は鉄系超伝導体の中で最高の値であり、最高品質のナノ層の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太田G、平松Gともに機能材料のナノ層の作製に成功し、他班でそのナノ層の構造解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
太田G:独自の電界変調法を駆使したナノ構造情報獲得の高効率化手法の開発。試料ひとつでナノ層の厚さと機能物性を同時に変調できるよう、酸化物単結晶や薄膜表面に電界誘起される原子層オーダー厚のナノ層の機能物性を計測するとともに、高分解能構造観察を試みる。 平松G:ナノ層中に意図的に形成した粒界・構造欠陥と輸送特性の関係の解明。粒界構造や欠陥密度を原子レベルで制御したナノ層界面を作製し、電子・イオン輸送特性解析を行うとともに、A01(ア)・(イ)・(ウ)に試料提供することでナノ構造情報を獲得する。
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