研究領域 | ナノ構造情報のフロンティア開拓-材料科学の新展開 |
研究課題/領域番号 |
25106008
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
北岡 諭 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, その他 (80416198)
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研究分担者 |
森分 博紀 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, その他 (40450853)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 酸化アルミニウム / 粒界 / 拡散 / 第一原理計算 / 保護膜 / 酸化チタン / 生体活性 / 酸化 |
研究概要 |
本研究では、領域内連携や共同研究により獲得される材料のナノ構造情報に基づく設計指針を、以下の酸化物セラミックスの“表面耐性”において具現化・実証することにより、革新的な耐環境性セラミックス材料を創製する。本年度に実施した内容は以下の通りである。 (1)保護膜性能: ガスタービン等の遮熱コーティング部材に使用される耐熱合金上に形成する酸化アルミニウム膜(酸化保護膜機能)に着目する。燃焼ガス曝露環境の高温加湿環境下における膜の酸素遮蔽性と構造安定性を向上させるには、膜の粒界を介した、酸素とAlの相互拡散現象を理解し制御することが不可欠である。第一原理計算により、双晶粒界における酸素とAlの空孔欠陥形成エネルギーの酸素分圧依存性を推算した結果、粒界の整合性の低下に伴い、バンドギャップが低下すると共に、バンドギャップに対するフェルミレベルの比が増加し、その結果として、粒界における酸素空孔の形成を促進させることがわかった。すなわち、整合性の低い粒界が酸素拡散の起源であることが示唆された。また、膜中の物質移動速度を厳密に把握するために、酸素・水蒸気トレーサーを用いたガス透過試験を開始した。これまでに、領域内連携により、膜厚方向の粒界に偏析するトレーサーを高感度に検出するためのガス透過試験条件を見出した。 (2)生体活性能: チタンを極微量の酸素を含む窒素中で熱処理して得られる酸化スケールが、優れた生体活性を発現する原因を解明するために、領域内連携により、スケール断面の微細構造をTEM-EELS、SIMS等により解析した。その結果、スケールを構成する酸化チタン(ルチル型)に固溶した窒素は、少なくとも、光触媒機能発現に寄与する酸素サイトに置換したものでなく、格子間に存在する可能性を示唆した。また、スケールを模擬した酸化チタン膜の酸素透過試験より、膜中の酸素のポテンシャル分布を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)保護膜性能 酸化アルミニウム膜の粒界が酸素拡散の起源であるという「酸化保護膜機能の本質」に迫る知見を得ることができた。また、酸素だけでなく水蒸気トレーサーを用いたガス透過試験を可能にすることにより、膜中の物質移動速度を厳密に把握するための測定基盤を構築した。 (2)生体活性能 優れた生体活性を発現する窒素固溶酸化チタン膜に対して、窒素の存在状態を明らかにしつつある。また、窒素の存在によって最表面が正に帯電する現象を解明する上で不可欠な、膜中の酸素ポテンシャル分布を決定することにも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)保護膜性能 酸素および水蒸気トレーサーを用いて、酸化アルミニウム膜(多結晶、双晶)の粒界を介したガス透過性を評価すると共に、領域内連携により、トレーサーの膜断面方向の濃度プロファイルより拡散定数を実測する。それにより、粒界を介した物質移動に及ぼす水蒸気の影響を明らかにする。また、それらの特性に及ぼす粒界偏析ドーパントの効果も明らかにする。 (2)生体活性能 酸化チタン膜の窒素透過試験を実施し、膜中の窒素のポテンシャル分布を決定する。そして、領域内連携により、酸素、窒素複合ポテンシャル勾配下における膜中の欠陥形成エネルギー分布を推算し、実際の状態と比較することで、最表面が正に帯電する根本原因を明らかにする。
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