計画研究
本研究では、領域内連携や共同研究により獲得される材料の表面、粒界、点欠陥、添加元素などのナノ構造情報に基づく合理的な設計指針を構築し、それに基づき従来性能を凌駕する革新的な材料の創製に資する。また、公募班との情報科学に関する連携研究の成果を通して、ナノ構造情報と情報学的手法を結びつけた材料設計手法の有効性を示す。本年度に実施した内容は以下の通りである。(1)保護膜性能: 高温酸素透過法と酸素トレーサー法を用いて保護膜中の物質移動に及ぼす表面電位極性の影響を明らかにするとともに、その現象を利用して新たな保護膜設計の可能性を示した。具体的には、アルミナ-ムライト積層体において、高酸素分圧側にアルミナ薄膜を配置した場合は“酸素遮蔽性と構造安定性が共に向上”するが、逆配置の場合は“両機能が共に低下”することがわかった。また、この現象は、ある酸素ポテンシャル勾配(閾値)以上のときに発現することがわかった。(2)生体活性能:チタンの酸化により形成したスケールの表面電位発現の起源は、“ルチル型”酸化チタン結晶中の窒素含有欠陥であることがわかった。例えば、表面電位が +の場合は(N2)O2+、-の場合は(NO)O-1であった。なお、後者の欠陥種は低温酸化初期に形成したスケール中に導入されたものであり、エネルギー論的に不安定で時間の経過に伴い格子点から放出されやがて消滅した。つまり、長時間曝露により表面電位がゼロになる。(3)固体イオニクス:プロトン伝導体として知られるBaZrO3のスーパーセル中にドーパントを複数個(約6~12mol%)Zrサイトに置換し、その電荷補償として酸素欠損を導入した固溶体空孔モデルを系統的かつ網羅的に構築、機械学習に基づいた安定配置の予測を行った。クラスター展開法などで用いられる2体間の相関関数を特徴量とすることで精度良いエネルギー予測が行えることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
(1)保護膜性能:酸化物膜の表面電位極性に着目することで、従来にない革新的な保護膜設計の概念を提案することができた。(2)生体活性能:チタンの酸化条件を調整することで、スケールの表面電位を+から-まで任意に制御することが可能であることを示した。(3)固体イオニクス: 2つのドーパントYが共有する酸素サイトに空孔が存在する直線状の3体クラスター(YZr-VO-YZr)が非常に安定な状態であることが明らかになった。
(1)保護膜性能:酸化アルミニウム等の酸化物の粒界を介した物質移動現象に及ぼす高温の酸素ポテンシャル勾配や加湿の影響について、酸素トレーサーを用いた酸素透過試験と原子・ナノレベルの構造解析により定量的に評価・解析する。そして、この材料中の物質移動機構の本質を理解することで、酸化物の環境遮蔽性と構造安定性の飛躍的向上のための新たな設計指針を構築する。(2)生体活性能: ナノ構造欠陥を有する酸化チタン表面に誘起される表面電位と生体活性能の相関について定量的に評価・解析することにより、ナノ構造欠陥制御による生体活性能の飛躍的向上を目指す。(3)固体イオニクス:前年度に確立したY添加BaZrO3におけるドーパントと酸素空孔の安定構造を決定するための機械学習に基づく探索アルゴリズムを他の3価添加元素であるSc、In、Gdなどの添加系にも応用する。これによりBaZrO3における3価ドーパントと酸素空孔の安定構造を支配する因子を解明する。また、高濃度に添加元素が存在する計算モデル内でのプロトン安定位置を決定することで、固溶領域での水和エンタルピーの定量評価とその支配因子の解明を行う。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 3件、 査読あり 11件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (34件) (うち国際学会 14件、 招待講演 13件) 備考 (1件)
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