計画研究
本A03(ケ)班では、表面金属ナノクラスター触媒(担持金属触媒)や固定化金属錯体触媒(表面金属錯体触媒)を用いた環境浄化及びグリーン有機合成反応をターゲットとし、単結晶モデル表面を用いた活性ナノ構造の原子レベル評価とそれに基づいた実触媒の開発を並行して行っている。本年度はまず、昨年度と同様、金属ナノクラスター/酸化物界面に形成される特殊なナノ構造の反応性について検討した。二酸化チタン単結晶表面に白金ナノ粒子を担持したモデル触媒表面において、メタノール分解サイトを直接同定するために、反応温度でのSTMその場観察を試みた。しかし、中間体であるメトキシの拡散が速く、STMの時間分解能が十分ではなかった。そこで、昇温脱離法により明らかにすることを計画し、装置の立ち上げを行った。実触媒に関しては、アミドやスルホキシド等の難還元性有機化合物を水素分子により還元し,有用化合物に変換する触媒反応に対して,既存の有機金属触媒を上回る性能を示す担持金属触媒を、ナノクラスター化、担体酸塩基点の協働効果を駆使して開発した。また、表面金属錯体触媒に関しては、配位性の有機分子で修飾した二酸化チタン単結晶表面において、ニッケルの均一な単核錯体を調製し、偏光全反射蛍光XAFS法によりその三次元構造解析に成功した。これまでの銅、金の結果と合わせ、単核金属錯体形成メカニズムを統一的に説明した。実触媒においては、配位性の有機分子を導入した規則性メソポーラス有機シリカの細孔表面に金属錯体を固定化し、高い触媒活性と特異な反応基質選択性を見出した。
2: おおむね順調に進展している
先端的なナノ構造解析手法を用いた単結晶モデル表面での触媒反応メカニズムの解明とともに、実触媒の開発も順調に進んでおり、ナノ構造と活性の相関に関する情報(触媒ナノ構造情報)の蓄積も進んでいる。また、本年度後半からは金属触媒の活性支配因子であるd-バンド中心に関して、従来は多くの時間及び計算コストを消費して理論計算により求めていたが、機械学習法により簡便に算出・予測する手法の開発を、班内及び領域内での連携研究により開始した。本テーマは、ナノ構造と機能との相関を、実験や理論計算のみならず、情報学的手法を取り入れることによって、より簡便かつ高速に明らかにするという本新学術領域の最も重要な課題の一つである。
今後も、これまでと同様に表面金属ナノクラスター触媒(担持金属触媒)と固定化金属錯体触媒(表面金属錯体触媒)を用いた環境浄化及びグリーン有機合成反応をターゲットとし、単結晶モデル表面を用いた活性ナノ構造の原子レベル評価とそれに基づいた実触媒の開発を、並行して行っていく。具体的には、表面金属表面金属ナノクラスター触媒に関しては金属/酸化物相互作用、すなわち、金属ナノクラスター/酸化物界面に形成される特殊なナノ構造に着目する。モデル単結晶表面(主に領域内共通試料である二酸化チタン)を用い、STM、昇温脱離法,光電子分光法、偏光全反射蛍光XAFS法等を駆使して、界面ナノ構造と触媒特性の相関を明らかにするとともに、実触媒の開発を行っていく。固定化金属錯体触媒に関しても同様に、二酸化チタンのモデル単結晶表面を用い、配位性の有機分子修飾によって単核、複核、三核錯体の調製とナノ構造解析、触媒反応測定を行う。金属の種類や原子数に依存した活性の違いを明らかにし、実触媒へと展開していく。また、情報科学的手法(機械学習)を用いて、触媒活性を支配する因子(dバンド中心等)を簡便に予測する手法の開発を試み、新規触媒材料探索法としての確立を図る。
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すべて 雑誌論文 (19件) (うち国際共著 1件、 査読あり 19件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 10件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 7件、 招待講演 8件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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