研究領域 | ナノ構造情報のフロンティア開拓-材料科学の新展開 |
研究課題/領域番号 |
25106010
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高草木 達 北海道大学, 触媒科学研究所, 准教授 (30359484)
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研究分担者 |
原 賢二 東京工科大学, 工学部, 教授 (10333593)
清水 研一 北海道大学, 触媒科学研究所, 教授 (60324000)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 触媒 / 機械学習 / ナノ構造解析 / 環境浄化 / グリーン有機合成 |
研究実績の概要 |
本班では、表面金属ナノクラスター触媒(担持金属触媒)や固定化金属錯体(表面金属錯体触媒)を用いた環境浄化及びグリーン有機合成反応をターゲットとし、単結晶モデル表面を用いた先端的ナノ構造解析による原子レベル評価と実触媒の開発を並行して行っている。また、情報科学的手法を用いた新規触媒物質探索法の開発も検討している。 表面金属ナノクラスター触媒において、金属/酸化物担体界面に形成される特殊なナノ構造(ナノ界面)に着目し、触媒特性に与える影響を調べた。二酸化チタンに白金ナノ粒子を担持したモデル触媒表面において、メタノール分解反応特性が白金表面、二酸化チタン表面のみの場合と異なることを昇温脱離法により確認した。金属/酸化物ナノ界面が中間体であるメトキシの動的挙動と反応特性に重要であることを示唆しており、今後理論計算による機構解明を行う。また、実触媒においては、二酸化チタンを担体として様々な金属を担持した触媒を、カルボン酸水素化によるアルコール合成反応に適用し、反応の顕著な担持金属依存性を見出し、ナノ界面が大きく影響することを確認した。 表面金属錯体触媒では、配位性の有機分子を導入した二酸化チタン単結晶表面(モデル表面)と規則性メソポーラス有機シリカの細孔表面(実触媒)に着目し、種々の金属種の固定化と金属による反応特性の差異について系統的に調べた。 情報学的手法を用いた触媒物質探索法の試みとして、金属表面触媒反応の制御因子として知られるdバンド中心の機械学習による予測を試みた。dバンド中心はDFT計算により求めるため、多種の金属や合金系を扱う場合は多くの計算機コストを必要とする。そこで機械学習により、入手容易な記述子(密度や金属の融解エンタルピー等)を用い、回帰手法の最適化を行ったところ、高速・高精度での予測を行うことができた。これにより、金属触媒の高速・高精度活性予測の基盤を提供した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
領域内での共通試料(例えば二酸化チタン)を中心にして、単結晶モデル表面、実触媒ともにナノ構造解析と触媒反応特性の解明が進んでおり、ナノ構造と活性の相関(触媒ナノ構造情報)の蓄積が順調に進んでいる。また、こうした触媒ナノ構造と情報科学をいかに融合させて、新しい触媒材料を探索していくかが、本新学術領域研究における重要なトピックの一つある。その試みとして、金属触媒の活性因子であるdバンド中心に関して、領域内での連携研究によって、機械学習による高速・高精度予測が可能であることを示した。これにより金属触媒の高速・高精度活性予測に向けて、情報科学を用いた新しいアプローチ法を提供することができた。他の触媒活性因子や、特定反応の転化率・選択性などの値を直接予測できないかが今後の検討事項である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、表面金属ナノクラスター触媒と固定化金属錯体触媒を用いた環境浄化及びグリーン有機合成をターゲットとし、単結晶モデル表面と実触媒開発を先端的ナノ構造解析に基づいた触媒ナノ構造情報の集積・最適化によって行う。同時に、情報学的手法が、触媒活性因子の予測や、特定触媒反応の転化率・選択性などの値の予測に関して、どの程度有効かを検証し、先端的ナノ構造解析による触媒材料開発との融合による高性能材料開発の高速化を検討していく。
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