研究領域 | 原子層科学 |
研究課題/領域番号 |
25107003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長田 俊人 東京大学, 物性研究所, 准教授 (00192526)
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研究分担者 |
山本 倫久 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (00376493)
町田 友樹 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (00376633)
八木 隆多 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (60251401)
菅原 克明 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (70547306)
劉 崢 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 無機機能材料研究部門, 主任研究員 (80333904)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 物性実験 / メゾスコピック系 / グラフェン / ディラック電子 / 原子層物質 / トポロジカル物性 |
研究実績の概要 |
本年度は研究設備の整備を終えて研究を本格的させた。各メンバーの成果は以下のとおりである。 (長田)h-BN基板を用いて高品質化したグラフェン単層/2層ヘテロ接合で量子ホール伝導の実験を行った結果、異なるバンド構造上の量子ホール状態間の接続状態を明らかにした。(町田)高移動度グラフェン/h-BNにおけるバリスティック伝導に起因するキャリアフォーカス効果を空間分布検出技術により明らかにした。様々な組み合わせのファンデルワールス接合における量子輸送現象を明らかにした。(山本)グラフェンクーパー対スプリッターにおけるクーパー対の分離効率を上げるべく試料の改善を行い、分離効率をより正当に評価する電流雑音測定系の構築に取りかかった。また、グラフェンジョセフソン接合における超伝導臨界電流の特性を詳細に調べた。(八木)7層までの多層グラフェンの磁気抵抗測定で電子構造の層数に関する偶奇性を明確に観測した。奇数層では質量を持つバンド以外に質量ゼロのバンドが1つあるのに対し、偶数層では質量ゼロのバンドが存在しないことを確認した。(劉)異なるバンドギャップを有するグラフェンとh-BNのヘテロ複合材料において、電子顕微鏡を用いてヘテロ複合原子層膜の原子構造および電子構造を解明するとともに、電子顕微鏡中でのヘテロ複合原子層膜のin-situ熱処理による構造変化を研究した。(菅原)整備・改良した高分解能スピン分解光電子分光装置を用いて、原子層グラフェン関連物質のスピン物性に関係した特異物性の起源を、スピン偏極電子状態の直接観測により解明した。(遠藤:連携研究者)単層領域・2層領域が混在するSiC上エピタクシャルグラフェンの磁気抵抗、ホール抵抗を測定した。これらが半古典的な2キャリアモデルで説明でき、解析から得られる両領域の面積比が原子間力顕微鏡での観察結果と良く一致することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下のようにメンバー毎に若干の進捗状況の違いはあるが、全体としては概ね順調あるいは計画以上に進展していると判断できる。 (長田)概ね順調:グラフェン単層/2層接合を用いた量子ホールヘテロ接合の問題を解決するとともに、空気中で不安定な新規原子層のためのグローブボックス中原子層転写積層装置を概ね完成できたため。(町田)計画以上:グラフェン/h-BNのみならず、NbSe2やFeTaS2を含めた様々な組み合わせのファンデルワールス接合における量子輸送現象を明らかにできたため。(山本)計画以上:グラフェンにおけるバレー流を観測したことに加え、グラフェン-超伝導接合系の物理に関しても大きな進展があった。(八木)概ね順調:技術的課題であったグラフェンの高移動度化は、すでに達成できた。多層グラフェン電子構造は系統的に明らかになっている。解析のための電子構造計算のため論文発表はやや遅れているが、順次執筆中であり、おおむね順調である。(劉)概ね順調:電子顕微鏡の中でh-BN/grapheneヘテロ複合原子層膜を熱処理し、h-BNのエッジからグラフェンが面内成長すること、h-BNとグラフェンの結合がN-Cボンドがメインであることを解明した。またEELS分析により、垂直にスタックしたヘテロ複合原子層膜の誘電性能には、グラフェンとh-BNの複合作用による効果が認められることを明らかにした。(菅原)概ね順調:本年度は、高感度スピン検出器用ターゲット薄膜作製装置を用いて4ヶ月以上ターゲットの寿命が延びた高品質強磁性Fe薄膜を製作することに成功し、スピン分解時のエネルギー分解能5meV、シャーマン関数0.14を達成した。(遠藤:連携研究者)やや遅れ:磁気抵抗測定のための主力の測定装置である希釈冷凍機が再度故障し(今回は制御部)、その修理・復帰に4ヶ月以上要したため。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に現在遂行中の研究を状況に応じて推進していく予定で、大きな変更はない。各メンバーの今後の方策は以下のとおりである。 (長田)整備したグローブボックス環境を用いて空気中で不安定な黒リンやFeSe等の新規原子層の試料作製を行い研究を進める。(町田)グラフェン/h-BNのバリスティック伝導を利用したFET制御を実現する。(山本)当初の研究計画の内容に加え、これまでに得られた結果の発展課題にも取り組む。(八木)物性班、理論班との連携を強化することで、実験データ解析などを速やかに行う。(劉)今後は、層状構造を有する遷移金属ダイカルコゲナイドやグラフェン/h-BN等の様々なヘテロ構造の電子顕微鏡観察用薄膜試料を、光学顕微鏡(次年度導入予定)を用いて作製し、収差補正機能付透過電子顕微鏡によりこれらヘテロ構造の原子構造および電子構造を解明していく。(菅原)スピン分解光電子分光装置の建設・改良を進めながら、グラフェンナノリボン・トポロジカル絶縁体原子層・単層NbSe2のスピントリプレット超伝導の研究を他の研究班および他新学術領域と共同で行う。(遠藤:連携研究者)希釈冷凍機は、現在は正常に運転出来ている。他の研究課題との時間配分を工夫し、本研究に十分な測定時間を確保出来るようにする。
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