計画研究
平成28年度は、様々な原子層物質における輸送現象、光物性、熱電効果に関する研究が行われた。越野は羽部とともに遷移金属カルコゲナイドにおけるスピン緩和を理論的に解析した。また近年実験的に実現された3次元グラフェンスポンジ物質に関して、越野と青木は周期系を仮定したバンド構造を計算するとともに、菅原(物性班)ら実験グループとともに電子輸送特性の評価と理論解析を行った。また越野は応用班谷口、渡邊、またMax Planck研究所とともに回転積層グラフェンにおける量子ホール効果についての実験および理論解析を行い、純粋なグラフェン系でHofstadter butterfly効果を初めて明瞭に観測した。齋藤らは原子層物質を始めとする低次元物質における熱電性能についての一般論を確立した。特に、空間的な閉じ込め長さが熱的ドブロイ波長が下回るときにのみ増強効果があることを示し、増強値を25年ぶりに理論的に更新した。また遷移金属カルコゲナイドの光バレー偏極を横断的に調べ、どの物質が最も優れた偏極を示すかを決定した。若林らは、円偏向の電磁場照射下でのカーボンナノチューブの電子状態をFloquet理論によって調べ、円偏向の電磁場照射によってナノチューブがバレーフィルターとして働くことを明らかにした。また斎藤晋らにより2層系h-BNの積層と歪みによる電子構造が詳しく調べられ、特に「ひずみ」を導入することで、間接ギャップ半導体から直接ギャップ半導体に転移することが明らかになった。青木, Maksym(レスター大)は2層グラフェンに垂直電場を印加することで、電子の運動に複屈折効果および負の屈折率をもたらすことを明らかにし、電子線に対する一種のレンズとして働くことを示した。
1: 当初の計画以上に進展している
研究対象は遷移金属カルコゲナイド等のグラフェン以外の原子層物質にも広がり、また複合原子層の研究も発展した。物理現象としては、今まで中心であった電子輸送や光物性以外にも、現在注目を集めている熱電効果やスピントロニクスへと発展し、総合的な物性理論をカバーしつつある。
5年間の研究の総括に向け、グラフェン、遷移金属カルコゲナイド、黒リンなど各物質ごとに広がった研究を完成させ理論体系としてまとめる。また原子層スピントロニクスや熱電効果にも力を入れるとともに、最近注目されつつある磁性原子層や超伝導原子層などの新しい物質の理論の構築も取り組む。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (40件) (うち国際共著 20件、 査読あり 40件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 12件、 招待講演 12件)
Phys. Rev. B
巻: 94 ページ: 235408
DOI:10.1103/PhysRevB.94.235408
Nature Communication
巻: 7 ページ: 12899
DOI:10.1038/ncomms12899
ACS Nano
巻: 10 ページ: 8964-8972
DOI:10.1021/acsnano.6b05002
Appl.Phys. Express
巻: 9 ページ: 85101
DOI:10.7567/APEX.9.085101
EPL
巻: 114 ページ: 35002
DOI:10.1209/0295-5075/114/35002
巻: 94 ページ: 75429
DOI:10.1103/PhysRevB.94.07542910.1063/1.4960531
Appl. Phys. Lett.
巻: 109 ページ: 63103
DOI:10.1063/1.4960531
巻: 94 ページ: 75104
DOI:10.1103/PhysRevB.94.075104
Phys. Rev. Lett
巻: 117 ページ: 36602
DOI:10.1103/PhysRevLett.117.036602
Nano Energy
巻: 25 ページ: 203-210
DOI:10.1016/j.nanoen.2016.04.053
Journal of Physics: Condensed Matter
巻: 28 ページ: 353002
DOI:10.1088/0953-8984/28/35/353002
巻: 93 ページ: 245428
DOI:10.1103/PhysRevB.93.245428
巻: 93 ページ: 195442
DOI:10.1103/PhysRevB.93.195442
Nano Lett.
巻: 16 ページ: 2260-2267
DOI:10.1021/acs.nanolett.5b04540
Journal of Physics D: Applied Physics
巻: 49 ページ: 195306
DOI:10.1088/0022-3727/49/19/195306
Computational Materials Science
巻: 114 ページ: 167-171
DOI:10.1016/j.commatsci.2015.12.036
2D Materials
巻: 3 ページ: 45014
DOI:10.1088/2053-1583/3/4/045014
巻: 16 ページ: 5053
DOI:10.1021/acs.nanolett.6b01906
巻: 94 ページ: 35202
DOI:10.1103/PhysRevB.94.035202
巻: 93 ページ: 245304
DOI:10.1103/PhysRevB.93.245304
Nature Physics
巻: 12 ページ: 240-244
DOI:10.1038/nphys3576
巻: 3 ページ: 15010
DOI:10.1088/2053-1583/3/1/015010
巻: 93 ページ: 75415
DOI:10.1103/PhysRevB.93.075415
巻: 93 ページ: 45201
DOI:10.1103/PhysRevB.93.045201
巻: 93 ページ: 41412
DOI:10.1103/PhysRevB.93.041412
巻: 94 ページ: 81102
DOI:10.1103/PhysRevB.94.081102
巻: 94 ページ: 155401/1-22
DOI:10.1103/PhysRevB.94.155401
巻: 94 ページ: 085303/1-11
DOI:10.1103/PhysRevB.94.085303
巻: 94 ページ: 035302/1-13
DOI:10.1103/PhysRevB.94.035302
J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 85 ページ: 014708-1--13
DOI:10.7566/JPSJ.85.014708
Chemical Physics
巻: 478 ページ: 55-61
DOI:10.1016/j.chemphys.2016.05.014
巻: 94 ページ: 245427
DOI:10.1103/PhysRevB.94.245427
J. Ceram. Soc. Jpn
巻: 124 ページ: 584
DOI:10.2109/jcersj2.15285
巻: 93 ページ: 45402
DOI:10.1103/PhysRevB.93.045402
巻: 85 ページ: 43706
DOI:10.7566/JPSJ.85.043706
巻: 85 ページ: 43001
DOI:10.7566/JPSJ.85.043001
巻: 85 ページ: 83703
DOI:10.7566/JPSJ.85.083703
巻: 94 ページ: 41102
DOI:10.1103/PhysRevB.94.041102
巻: 94 ページ: 235307
DOI:10.1103/PhysRevB.94.235307
巻: 94 ページ: 125125
DOI:10.1103/PhysRevB.94.125125