研究領域 | 宇宙における分子進化:星間雲から原始惑星系へ |
研究課題/領域番号 |
25108003
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
永原 裕子 東京工業大学, 地球生命研究所, フェロー (80172550)
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研究分担者 |
木村 勇気 北海道大学, 低温科学研究所, その他 (50449542)
為則 雄祐 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主席研究員 (10360819)
星野 真人 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (30508461)
高橋 修 広島大学, サステナブル・ディベロップメント実践研究センター, 特任講師 (60253051)
青木 貞雄 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 総合科学研究センター, 主任研究員 (50016804)
渡辺 紀生 筑波大学, 数理物質系, 講師 (80241793)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 原始惑星系円盤 / 有機物生成 / 表面反応 / 軟X線顕微鏡 / 有機物進化 |
研究実績の概要 |
本年度は,原始惑星系条件における表面反応実験において着実に実験が進展した.最も主要なガス分子であるH2(実際はD2 を使用)およびCOガスの吸着により,金属基板上でCH4(実際はCD4),直鎖状Cなど単純な有機物が生成した.H2とCOの反応は,Fischer-Trops反応, water-gas shift反応, Boudouard 反応の3つの反応が考えられるが,反応物の生成レートから,water-gas反応が優勢であると推定された.実際の実験装置内においては,Fe, FeNi合金上より純粋Ni上の反応がもっとも効果的である.原始惑星系条件においては純粋Niの存在確率はきわめて低く,原始惑星系におけるFischer-Tropsh型反応による有機物形成は顕著ではないことが考えられる. 軟X線顕微鏡開発に関しては,結像型マイクロXANESはきわめて順調に可動し,本新学術領域研究の本班および他班の実験において用いる基板のキャラクタリゼーション,他班による実験生成物の同定などに威力を発揮している.しかしながら,Wolterミラー2つを組み合わせた高質量分解能・高空間分解能をもつ装置に関しては,分解能と色収差の2つの条件を同時に満たすことがきわめて困難であることが明らかとなり,この問題を解決するため,可視光変換型画像検出器方式を用いることを同時進行的に進めることとした. XANESデータ解析のための理論構築に関しては,原始惑星系条件において最も多量に存在すると考えられる非晶質ケイ酸塩の理論的取り扱いが進展した.前段階として,同じくMgとSiから成る結晶質フォルステライトの表面エネルギーを高精度で決定することに成功し,既知の面に関しては既存データと整合的な値を得ると同時に,未知も面に関してもデータを得ることに成功した. 円盤化学進化モデルはほぼ完成の段階に達しつつある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画は,分担者7名が属する5つの研究機関においてそれぞれ遂行されている.本年度の計画においては,4つの機関においては順調に計画が進展し,それぞれ当初目的を達成する成果を得ている.班としては公募研究担当者,他班からの参加希望者も含め,全体集会時に合わせて1日の班会議をもち,さらに,九州大学の公募研究者の実験装置の見学およびA05班の分析装置見学を含めた研究会をもち,情報交換を密に行うとともに,計画の進展のための方策を議論している. 進展状況が遅れているのは,SPring-8における軟X線顕微鏡装置開発である.当該装置は,Wolterミラーを2段階に組み合わせ,高分解能で3次元の有機物空間分布を撮像するというきわめて将来的価値の高い装置である.前年度までに完成させた結像型マイクロXANES装置の知見をもとに開発を進めているが,分解能と色収差をミラーを用いて同時に実現することの困難が最大の問題といえる.
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今後の研究の推進方策 |
当該班計画は全体としては順調に進展しており,計画最終年度である平成29年度においては,それぞれの分担部分を完成させることが重要である.原始惑星系円盤条件における有機物形成実験に関しては,実験条件,基板種を変化させた実験を可能なかぎり多く進めることが中心である.これまでの研究においては基板種のうち,原始惑星系円盤においてはほとんど存在しないと思われる金属Ni上が圧倒的に高効率で有機物を形成可能であり,実際に存在する金属FeあるいはFeNi合金上ではきわめて効率が低い.このことが不変的であるかどうかを確認することが主要な目的である.そのことが普遍的であることが確認されれば,原始惑星系においてFischer-Tropsh型反応によって有機物は形成されにくいという,きわめて重要な結論を得ることができる. 軟X線顕微鏡開発に関しては,形状の異なるWolterミラーの開発を行い,二段階Wolterミラー方式をさらに追求するとともに,可視光変換型画像検出器の利用も平行して進め,年度内の完成をめざす. 表面反応理論解析に関しては,実際の原始惑星系において主要な表面の一つと考えられる非晶質Mg-Siケイ酸塩の表面エネルギー計算を成功させる.これは本研究のほか,物質化学などにおいても有益な情報となると予想される. 原始惑星系円盤有機物進化モデルに関しては,すでにモデル開発はほぼ終了していることから,原盤初期条件による有機物進化を系統的に見当する. これらの研究を円滑に進めるため,前年度同様,独自の班会議を1-2回開催し,情報の共有と計画実現のための議論をおこなう.
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