研究領域 | 分子アーキテクトニクス:単一分子の組織化と新機能創成 |
研究課題/領域番号 |
25110002
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小川 琢治 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80169185)
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研究分担者 |
田中 大輔 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60589399)
田中 啓文 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 教授 (90373191)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 単一分子電子素子 |
研究実績の概要 |
1.単一分子磁石(SMM)の走査トンネル顕微鏡(STM)による単一分子書き込みの実現。テルビウム・ポルフィリンダブルデッカー錯体は、単一分子でスピンの反転が遅くなる単一分子磁石(SMM)としての性質を持っており、このSMM性はプロトンが付いた形の中性体では存在しないが、アニオン体では現れることを既に報告している。今回、Au(111)上にプロトンを持つオクタエチルポルフィリンダブルデッカー型錯体(OEP-DD)の単層膜を作成し、STMでの電子注入で、SMM性を有するラジカル体のOEP-DD (Radical form)を一分子単位でAu(111)上にパターニングする事に成功した。プロトンを持つ中性のOEP-DDの単分子膜の観察を行ったところ、正のサンプルバイアスでは、一様な明るさのSTM像が観測された。この中の一分子に、STMチップからサンプル側へ電子注入を行ったところ、標的とした分子のみが明るく観測された。電子注入前後で走査トンネル分光法(STS)測定を行ったところ、電子注入には、πラジカルスピンに由来する近藤共鳴が観測され、STMパルスを用いることにより、単分子レベルで表面上にSMMsをパターニングすることに成功した。2.末端にチオール基を持つ自由な配列のポルフィリンアレイを合成する手法を開発し、これらのアレイの単一分子電気特性を計測した。その結果、ポルフィリン自体がアンカーとして機能し、単一分子でスライドスイッチ的振る舞いをする分子が実現出来た。 3.種々にポリオキソメタレート(POM)/有機分子複合体を合成し、その単一分子電気特性を計測した。その結果、再現性良く負の微分抵抗が観測されることがわかった。 4.POM/単層カーボンナノチューブネットワークにおいて、観測されるパルス発振現象が、POM濃度により制御できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目標は、下記の通りである。高次に集積化することで新たな機能を発現することが期待できる機能単位(例えば、整流、負の微分抵抗、メモリ効果、積分発火素子など)を単一分子で実現するための分子設計(浅井(美)グループとの共同研究)と合成を行う。それらの単一分子での電気特性を計測し(夛田グループとの共同研究)、集積化することでの高機能発現をカーボンナノチューブ電極などを用いた多探針計測で実証する(松本(和)グループ、長谷川グループとの共同研究)また、他班からの提案に基づく機能を実現するための分子構造を設計、合成する。浅井(哲)グループとの共同研究により、それらを統合して新たな情報処理方法の可能性を探る。 到達内容:これまでに、ポルフィリン、イミド、ポリオキソメタレート、カーボンナノチューブなどを用いて、整流、負の微分抵抗、単分子磁石などが少数~単一分子で実現できることを示してきた。また、有機合成的手法や自己組織化的手法で、機能単位を組織化する研究も行ってきた。これらの到達度は、ほぼ予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
1.一分子に3つの2層カーボンナノチューブ(DWNT)を結合した系を再現性良く作成し、その電気特性を多探針STMで計測する。これまでの研究では、単層カーボンナノチューブ(SWNT)を分子に結合して、原子間力顕微鏡(AFM)を用いてその分子の電気特性の計測を行っていた。三端子にすると、測定のため多端子の走査トンネル顕微鏡(STM)を使う必要が有るが、その場所あわせには走査電子顕微鏡(SEM)を用いる必要が有る。現有のSEMの能力ではSWNTを精度良く観察することが困難であるので、直径が太いDWNTを用いる。 2.POM/有機分子複合体の単分子電気特性を系統的に調べて、設計通りの負の微分抵抗(NDR)挙動をする分子を設計・合成できるようにする。POMに有機チオール基を結合した物は、既に合成と測定を行っている。POMが電荷を持った状態がNDRを出す原因と考えているが、電荷を持つ状態は一般に不安定なためNDRが見られる電圧が揺らぐと考えている。そのため、荷電状態を安定化するような分子をPOMに結合させ、分子設計でNDRの電圧を設計できるようにする。 3.ポルフィリン-イミド単分子整流子を用いて、積分型閾値素子を実現する。ポルフィリンーイミド分子を一方向に並べて金属ナノ粒子に結合させる。電子の流れ方が一方向になると考えられるので、電圧を加えると金ナノ粒子に電荷が溜まることになる。金ナノ粒子の大きさが十分に小さいと、クーロン反発により数電子で数Vの電圧になると計算できる。その電圧が整流器の逆耐圧を超えると放電が起こり、内部に溜まった電荷が外に逃げ出す。このような原理で積分型閾値を少数分子で実現する。 4.逐次合成によるポルフィリンアレイ合成を発展させ、単一分子メモリ、単一分子負の微分抵抗などを実現する
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