研究領域 | 分子アーキテクトニクス:単一分子の組織化と新機能創成 |
研究課題/領域番号 |
25110002
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小川 琢治 大阪大学, 理学研究科, 教授 (80169185)
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研究分担者 |
谷 洋介 大阪大学, 理学研究科, 助教 (00769383)
山下 健一 大阪大学, 理学研究科, 講師 (40468145)
田中 啓文 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (90373191)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 単一分子電子素子 / 単一分子整流子 / 単一分子磁石 / 負の微分抵抗 |
研究実績の概要 |
1.縮環型ポルフィリン二核テルビウムダブルデッカー錯体・単分子磁石の電子状態、磁性の解明:単分子磁石をスピントロニクスに用いるためには、磁性中心が二つ以上隣り合うことが必要であるが、単核錯体を用いると偶然分子が隣り合う必要が有り、そのような確率は低い。二核錯体を用いると、必ず2つのテルビウムイオンが隣り合うため、そのような問題が解決できる。二つ目の問題点は、伝導電子とテルビウムのスピンの相互作用が弱く極低温でしか相互作用が観測できないという点である。テルビウムのスピンと分子内の電子の相互作用をチューニングすることで、この問題を解決できないかと考えて、ジプロトン体、ジアニオン体、ジラジカル体、ジカチオン体の電子状態の化学種を合成した。この中で、ジプロトン体以外は単分子磁石になる事を確認した。ジラジカル体は、もし二つのラジカルの相互作用が弱ければ、フェルミ準位付近に非共有電子が存在することになり、同じくフェルミ準位付近に存在するテルビウムの電子との相互作用が期待できる。このジラジカル体は、ΔEが1440KのS-Tエネルギー差を持つビラジカル構造を持つ事が明らかとなった。 2.ポルフィリンアレイを用いた単分子電導の研究:フェニレンでつながったポルフィリンアレイを合成し、それらの分子の単分子電導度を計測した。分子の各パーツの部分透過確率をTiと表すと全体のコンダクタンスGは、Π(Ti)と表せることを実証した。この分析から、フリーベースのポルフィリンは電導度の高いアンカーとして働く事も明らかになった。 3.金属ポルフィリンを用いた単分子電導の研究:ポルフィリンは、中心金属の種類によりHOMO-LUMOを制御することが可能である。この事を利用して、一連の金属ポルフィリンを合成し単分子計測を行うことで、分子に結合している金属のフェルミ準位と、分子-電極相互作用の大きさを実測することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目標は、下記の通りである。高次に集積化することで新たな機能を発現することが期待できる機能単位(例えば、整流、負の微分抵抗、メモリ効果、積分発火素子など)を単一分子で実現するための分子設計と合成を行う。それらの単一分子での電気特性を計測し、集積化することでの高機能発現をカーボンナノチューブ電極などを用いた多探針計測で実証するまた、他班からの提案に基づく機能を実現するための分子構造を設計、合成する。浅井(哲)グループとの共同研究により、それらを統合して新たな情報処理方法の可能性を探る。 到達内容:これまでに、ポルフィリン、イミド、ポリオキソメタレート、カーボンナノチューブなどを用いて、整流、負の微分抵抗、単分子磁石などが少数~単一分子で実現できることを示してきた。また、有機合成的手法や自己組織化的手法で、機能単位を組織化する研究も行ってきた。これらの所期の目的以外にも、派生した興味深い多くの発見が有った。これらの到達度は、ほぼ予定通りで有り、概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度で有るので、これまでに明らかにした単分子電気特性の統合化を中心に行う。 (1)一つの分子に三つの探針を結合して三端子電気特性を測定する。分子の合成はほぼ修了しており、カーボンナノチューブとの結合の反応の収率を上げることが課題で有る。 (2)POMが示す負の微分抵抗を活かした電気素子を実現する。神経様の発火現象はすでに報告しているが、メモリスタ的な動作も検討したい。 (3)より電導度の高い単分子磁石分子を実現することで、スピントロニクス現象の解明を進める。 (4)飛躍的に高い温度で単分子磁石性を示す分子を実現する。液体窒素温度(77K)を目標とする。
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