研究領域 | 分子アーキテクトニクス:単一分子の組織化と新機能創成 |
研究課題/領域番号 |
25110008
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高木 紀明 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (50252416)
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研究分担者 |
荒船 竜一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 独立研究者 (50360483)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 表面・界面 / 近藤効果 / スピン軌道相互作用 / 超伝導 |
研究実績の概要 |
前年度に、STM探針-磁性分子(鉄フタロシアニン)-金電極からなる単分子量子ドットにおいて、近藤領域とスピン軌道相互作用領域の二つの状態間のクロスオーバーが可逆的に起こることを前年度に見出し,予備的な理論解析を行った。今年度は、DFT計算による詳細な幾何構造の決定と電子状態の解析を実施した。STM探針が鉄イオンに近づくと、鉄イオンが探針側に動き、鉄イオン・金電極間の距離が最大で0.1nm伸びることがわかった。これに伴い、dz2軌道の状態密度が全体的に狭まり金電極とのs-d混成相互作用が弱くなることがわかった。クロスオーバーは、STMの探針操作により近藤カップリングが弱くなった結果、近藤遮蔽によって繰込まれていたスピン軌道相互作用が露になったため起きたと解釈される。 多層シリセンの構造解析を低速電子回折および動力学理論解析によって行った。ハニカム原子層が積層したスタッキング構造、ダイアモンドSi結晶の(111)面にSi原子、Ag原子または欠陥が周期的に配列した構造、理論計算により提案されていた前駆体構造等さまざまな構造モデルについて比較検討した。ダイアモンドSi結晶の(111)面にAg原子が配列したモデルが最も良く実験結果を再現することを見出した。このことから、多層シリセンはグラファイト様のスタッキング構造ではなく、ダイアモンドSi結晶の(111)面をベースとする構造であることがわかった。 超伝導と近藤効果の競合を調べるために、超伝導を示すIn単原子薄膜におけるマンガンフタロシアニン(MnPc)の吸着構造および電子状態をSTMにより研究した。MnPcの吸着により超伝導ギャップが狭まること、MnPcのマンガンイオンにおいて近藤共鳴状態を示唆する特徴的なスペクトルを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基板・吸着分子からなるヘテロシステムについて新たな知見が得られていることから、順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
トンネル顕微鏡やレーザー光電子分光などの電子分光を使って基板ー吸着分子からなるヘテロシステムについて新奇現象の探索、これまで得られている現象の理論解析(第一原理計算や数値繰り込み群等)を重点的に進める。
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