計画研究
平成29年度は、以下の三つの研究を行なった。(1)鉄フタロシアニン(FePc)分子とCu、Ag、Auなどの金属電極との接合とスピン物性ついてトンネル顕微鏡(STM)と第一原理計算をもとに研究してきた成果を系統的に考察した。Au電極に接合したFePc分子について、STM探針を使って分子中心にあるFe原子の位置を電極表面に対して垂直に変位させることで近藤効果とスピン軌道相互作用に由来する異方的なスピン状態との間の量子相転移を制御することを実現した。量子相転移の制御に関して新たな方向性を示した。(2)スピン軌道相互作用の非占有電子状態に対する影響について、レーザー多光子光電子分光および第一原理計算・半無限系電子状態計算による研究を行なった。グラフェンで覆ったIr電極における非占有鏡像表面状態について、スピン軌道相互作用由来のスピン分裂を観測し、また円偏光励起によりスピンテクスチャを決定した。量子数n=0の状態とn=1, 2の状態では、スピンテクスチャが反転することを見出した。この反転は、Ir原子核由来のスピン軌道相互作用および表面電場に由来するRashba項の競合で起きていることが考えられる。(3)分子ー無機系電極からなるヘテロシステムの電極基板となる新奇物質として、ワイル半金属の候補である遷移金属カルコゲナイドMoTe2やWTe2についてその電子状態を明らかにすることに取り組んだ。STM分光イメージングにより準粒子干渉パターンを測定し、バルクバンド構造との比較から電子構造を決定した。理論的に予言されているワイル点のk空間での位置を絞り込むとともにフェルミアークと呼ばれるワイル電子系に特有の表面状態の分散関係を占有・非占有電子状態を含め、実験的に明らかにした。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
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