計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
(1)本研究において,単一分子の電気伝導やスピン輸送特性を測定するために当研究室に既存の4探針走査トンネル顕微鏡 (4探針STM)装置を用いるが、その装置によって試料よび探針を観察するために搭載されている走査電子顕微鏡(SEM)鏡筒 「2レンズエレクトロンカラム(2LE)」(米国FEI社製)で高分解能・低電子線照射損傷で2次電子像観察を可能とするための専用のコントローラを導入した。その結果、ある程度高分解能化が実現したが、分子構造体の観察には不十分であった。分解能が十分上がらない原因を探索したところ、実験室に浮遊する交流磁場の影響であることがわかったので、試験的に簡易型のパーマロイフィルムでチャンバーをシールドしたところ、分解能が若干向上した。来年度は、試料室チャンバー内にパーマロイ板の磁気シールドを設置することによって、浮遊磁場を完璧にシールドしてSEM分可能を格段に向上させたい。(2)シリコンの平面型構造であるシリセンの多層膜をAg(111)面上に成長させ、その原子配列構造を低速電子回折の強度解析で調べた。その結果、シリコン層はダイヤモンド構造に極めて近い格子を組んでいるため多層シリセンとは言えないこと、また、シリコン最上原子層にはAgの1原子層が偏せきしてSi(111)-√3×√3-Ag表面構造をとっていることがわかった。以上より多層シリセンは形成されていないことが明らかになった。
3: やや遅れている
今年度は、本研究での実験の中心となる4探針走査トンネル顕微鏡に結合してある走査電子顕微鏡の分解能を、その専用コントローラを導入することによって十分向上させる予定であったが、分解能を劣化させる原因が実験室に浮遊する交流磁場であることが判明し、平成26年度に根本的な対策を施すことになった。これにより、平成25年度には分子系の測定実験までこぎつけることができなかった。
4探針走査トンネル顕微鏡の試料室内面にパーマロイ板による磁気シールドを設置し、実験室内に浮遊する交流磁場の影響を低減させる。そのためのパーマロイ板の形状設計および仕様の決定を行い、製作依頼をなるべく早く出す。走査電子顕微鏡の高分解能化が実現した暁には、本研究の目的である分子構造体の電気伝導およびスピン伝導計測を行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
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http://www-surface.phys.s.u-tokyo.ac.jp/