研究実績の概要 |
原子分解能を有するSTM(走査トンネル顕微鏡)を駆使して、1個の有機分子の精密観察、さらにSTM分光測定を同時にその場で行うことで、単一有機分子の電子状態密度計測および伝導計測を行ってきた。単一有機分子デバイス実現への基礎的知見を得た。 本研究を通して、千葉大学において4台の超高真空STM装置を自作・開発することができた。2台は4K, 1台は78K, 1台は300Kで稼働している。さらに2台の4K-STM装置には自作・超伝導コイルを取り付け磁界印加が可能となった。現在さらに5台目のSTM装置を開発中である。 これらの装置毎に幅広い有機分子のSTM研究を実践することができた。【1】単一分子磁気伝導への単一磁性原子の影響の定量計測。【2】CO反発相互作用による新たな分子操作技術の開発。【3】グラフェンナノリボン立体構造の作成と電子状態/伝導計測(A01班・A04班との共同)。【4】DNA分子接合の開発と伝導計測(A02班との共同)。【5】室温・単一分子磁気伝導の計測。【6】3次元磁界印加による単一分子磁気伝導の異方性計測。 特に、これまでは1個の有機分子のSTM研究は主に極低温が中心であり我々も実践してきたが、デバイス実用化に向けては室温で安定な単一有機分子や有機分子膜を作成する技術の確立が重要である。2017年度、Fe(001)表面のスピン偏極電子状態を密度と有機分子π軌道の重なりによる強固な結合を用いることで、室温でも熱拡散しない、極めて安定な1個の有機分子および分子膜が作成できることを発見した。
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