研究領域 | 分子アーキテクトニクス:単一分子の組織化と新機能創成 |
研究課題/領域番号 |
25110012
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
夛田 博一 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40216974)
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研究分担者 |
田中 彰治 分子科学研究所, 安全衛生管理室, 助教 (20192635)
山田 亮 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20343741)
大戸 達彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90717761)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / 分子エレクトロニクス / 分子スピントロニクス / ゆらぎ |
研究実績の概要 |
構造および機能を精密に設計された分子を用い,①非磁性および磁性電極と分子の接続様式の違いによるキャリアおよびスピン注入特性に関する知見,②分子構造の違いによる伝導度特性および磁気抵抗効果の変化から,キャリアおよびスピン輸送機構に関する知見,③熱の輸送および熱起電力の発生に関する知見、④信号に重畳するノイズの起源と,キャリアおよびスピン、熱の注入・輸送機構との関係に関する知見と,ノイズを積極的に加えることによる信号増強方法の指針,を得ることを目標とし,単一分子におけるキャリアおよびスピンの注入・輸送の制御方法を確立してスイッチング素子の設計指針を導出することを目的とする。 本年度は、下記の2課題について集中的に実験を行った。 (1)カルバゾール分子を用いた分子接合を作製し、分子ダイオード特性を確認した。カルバゾールは、電子供与性の窒素原子の存在のため、分子内に電気双極子を有し、HOMO が偏っている。この分子に電界を加えると、HOMO が変形し、その結果、電極との接合様式が変化する。分子接合において、電圧ー電流特性は、キャリアの輸送に寄与する軌道の準位と、電極と分子との電子的カップリングの大きさによって決まる。従来、前者の変調によるダイオードの発現に関する報告が主であったのに対し、電界により、分子と電極とのカップリングを変調することでダイオード特性が発現することを示した。 (2)金基板上のレジスト薄膜にリソグラフィー技術を用いて細孔を加工し、その中に金属錯体分子ワイヤーを逐次合成し、上部より導電性高分子を塗布して、サンドイッチ構造を作製して電流ー電圧特性を計測する技術を確立した。金属錯体ワイヤー膜は、明瞭なヒステリシスを示し、高抵抗状態と低抵抗状態を、電圧パルスの印加によってスイッチングできることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極低温下で、安定した分子接合を作製する技術を確立し、いくつかの分子の電流ー電圧特性を再現性よく計測することを確認した。その上で、カルバゾール分子のオリゴマーを対象分子とし、適切な長さの分子では、電界による分子軌道の変調によるダイオード特性を得ることに成功した。理論計算を用いて考察することにより、分子軌道の偏りにより、電極と分子との電子的カップリングが変化することによるダイオード特性の発現であることを明らかにした。 また、金属錯体分子ワイヤーを用いることにより、抵抗変化型スイッチング現象を確認した。対象実験として、アルカン分子では特性が発現しないことから、金属錯体の電荷状態の変化に基づくと考察される。 これらの特性は、スイッチング素子の構築に重要な知見となり、今後の研究を加速するものである。
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今後の研究の推進方策 |
分子ダイオードに関しては、電極種類を変え、より大きな整流特性を得る指針を導出する。特に、Ni などの磁性電極を利用し、分子軌道とのカップリングの影響を見るとともに、極低温下で磁場を印加し、磁気抵抗効果の発現を試みる。 抵抗変化型スイッチに関しては、より安定で再現性のいい試料作製方法、計測方法を確立し、分子の幅を広げることで、スイッチング機構を明確にする。
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