計画研究
(1)選択的オートファジーにおける膜動態の分子機構の解析 これまでにプロテオミクス解析により、選択的オートファジーのマシナリー候補のタンパク質を数百同定している。今年度はこの候補について、siRNAスクリーニングを実施し選択的オートファジーの制御因子かどうかを検討した。その結果、約20個が選択的オートファジーに必要であることが示された。(2)オートファジーの膜動態と病態との関わりの解明 年度計画書に記載したがん細胞の解析については進展が無かったが、それとは別にヒトの遺伝性神経疾患の原因となることが知られているリン脂質脱リン酸化酵素とオートファジーとの関わりに大きな進展があった。リソソーム膜に存在するある特定のリン脂質がこの酵素で脱リン酸化されることが、あるアクチン重合制御タンパク質の活性化に重要で、その活性化によってアクチン重合が進むとリソソームとオートファゴソームの融合が起こる。今後病態との関係が明らかになることが期待される。(3)オートファジーの膜動態を制御する低分子化合物の探索 新たな化合物スクリーニングは開始に至らなかった。また既に得た候補化合物について、培養細胞をこの化合物で処理すると、オートファゴソーム形成に必要なAtg16Lの細胞内局在に異常が生じることが明らかになった。(4)オートファジーの新規制御タンパク質の同定 オートファジーはメンブレントラフィックの一種であるため、他のメンブレントラフィックで用いられている制御タンパク質がオートファジーにも関与する可能性が高い。新規のオートファジー制御因子を探索するため、分泌経路に関わるタンパク質のsiRNAラブラリーのスクリーニングを行った。その結果、数個のタンパク質がオートファジーを正または負に制御することが判明した。
2: おおむね順調に進展している
スクリーニングによる制御タンパク質の同定や同定済の低分子化合物の解析は、順調に進展している。がん細胞の解析や化合物スクリーニングが遅延しているが、当初予想していなかった遺伝病の原因遺伝子産物によるオートファジー制御を明らかにすることに成功し大きな成果が出ている。
スクーリングで絞り込んだ制御タンパク質の機能解析に全力を挙げる。遅れている化合物スクリーニングなどを推進する。また新たに見つかった遺伝病との関係について分子機構を明らかにしていく。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 12件、 招待講演 19件) 図書 (1件) 備考 (1件)
FEBS Letters
巻: 590 ページ: 161-173
10.1002/1873-3468.12048
http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/yoshimori/