計画研究
オートファジーにおいては、細胞内の成分が選択的あるいは非選択的にオートファゴソームという脂質二重膜包で隔離され、リソソーム/液胞に運ばれて分解される。本研究では、優れたモデル生物である酵母および無細胞系を用いて、オートファゴソームの形成に必須のAtgタンパク質の分子機能および作動機構の解明、新規オートファジー関連因子の解析、選択的オートファジーの分子機構の解明、を目標としている。本年度の進捗状況を以下に列挙する。(1)昨年度構築に成功したAtg2-Atg18複合体の精製標品と人工膜小胞を用いた解析系において、Atg2は曲率の高い膜小胞に強い親和性を示すこと、Atg18が膜小胞に結合するにはAtg2とホスファチジルイノシトール 3-リン酸の両者との相互作用が必要であること、Atg2のC末端領域は、Atg2と膜小胞との結合およびAtg18との結合には必要ないが、Atg18の膜小胞への結合に重要な役割を担うことなどが明らかとなった。さらに、Atg2-Atg18複合体とAtg9小胞との相互作用様式を解析し、同複合体はAtg2を介してAtg9タンパク質と相互作用することが明らかとなった。(2)昨年度発見したAtg12-Atg5-Atg16複合体とAtg1-Atg13-Atg17-Atg29-Atg31複合体の相互作用について解析を進め、この相互作用が栄養飢餓に応じて起こること、両複合体の全てのサブユニットを必要とすること、Atg1複合体の高次集積がこの相互作用に重要であることなどを明らかにした。(3)オートファゴソーム膜前駆体の形態、形成機構、組成に関してさらなる情報を得ることに成功した。(4)オートファゴソーム形成に重要なRab GTPase Ypt1の不活性化因子であるGyp1がAtg8と相互作用することを見いだし、そのメカニズムを明らかにした。(5)核と小胞体のオートファジーによる選択的分解を担う受容体タンパク質Atg39、Atg40を同定してNature誌に報告し、多くのメディアを介して成果を発信した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り進行しているものと遅れが見られるものの両方があるが、本研究で特定した新規因子や新しい相互作用の解析など大きな進展も見られ、オートファジーの分子メカニズムを解明することを目的とした本研究の展開としては、おおむね順調に進展していると考えられる。
引き続き、酵母および無細胞系を用いて、以下の項目に特に焦点を当て研究を推進する。(1)オートファゴソーム形成におけるAtgタンパク質の分子機能:Atg2-Atg18複合体の膜形成における具体的役割の解明。同複合体とAtg9との相互作用の制御機構と意義の解明。Atg12複合体とAtg1複合体の相互作用のメカニズムと意義の解明。(2)オートファゴソーム形成における膜動態:オートファゴソーム膜前駆体の形成機構の解明。膜の伸張機構と膜供給源の究明。(3)細胞内小胞輸送経路とオートファゴソーム形成との関係:Gyp1とAtg8と相互作用の意義の解明。エンドサイトーシスとエキソサイトーシスのオートファゴソーム形成への関与に関する解析。(5)核と小胞体の選択的オートファジー:Atg39、Atg40の機能と動態の解析。核と小胞体の選択的オートファジーの生理的意義の解明。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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