計画研究
本研究では、酵母および無細胞系を用いて、オートファゴソームの形成に必須のAtgタンパク質の分子機能および作動機構の解明、新規オートファジー関連因子の解析、選択的オートファジーの分子機構の解明を目標としている。平成28年度の研究成果を以下にまとめる。(1)オートファゴソーム形成におけるAtgタンパク質の分子機能の解明:機能未知因子Atg2内に2つの膜結合領域を見いだし、そのオートファゴソーム形成における役割を解明した。1つは小胞体と関連し、他方はAtg18と膜との結合に関与することが明らかとなった。Atg12複合体とAtg1複合体の相互作用機構とその意義について解析し、この相互作用には各複合体の全てのコンポーネントが必要であること、Atg12のN末端領域とAtg1複合体内のAtg17が直接相互作用していることが示唆された。また、この相互作用により、Atg12複合体がオートファゴソーム形成の初期にオートファゴソーム形成の場にリクルートされること、これによりAtg1複合体の自己会合が促進されることが示唆された。(2)オートファゴソーム形成における膜動態の解明:オートファゴソーム膜の伸張機構と膜供給源について、小胞体から形成されるCOPII小胞を介して膜が供給されることを示唆する重要なデータが得られた。(3)核と小胞体の選択的オートファジーに関する解析:核および小胞体に対するオートファジーレセプターであるAtg39、Atg40の細胞内動態を解析し、これらがオートファジーの誘導に応じて各オルガネラ上に集積することを明らかにした。また、Atg40には小胞体上で高い膜曲率を形成する機能があることが示唆された。(4)核膜孔複合体構成タンパク質(ヌクレオポリン)が窒素源飢餓時にオートファジーで分解されること、また、この分解は未知のレセプターを介して起こることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り進行している課題と遅れが見られる課題があるが、本研究で特定した新規因子や新たな選択的オートファジー経路の発見とその解析など、大きな進展も見られ、オートファジーの分子メカニズムを解明することを目的とした本研究の展開としては、おおむね順調に進展していると考えられる。
今年度は本研究の最終年度であり、これまでの成果をまとめることを意識しながら、以下の項目に特に焦点を当て研究を推進する。(1)Atg2-Atg18複合体とAtg9小胞との相互作用について、他のグループからの報告内容に訂正を迫る結果を得ているので、これをまとめ、論文として発表する。(2)Atg2の分子機能について、現時点で得られている知見をまとめ、発表する。(3)Atg12複合体とAtg1複合体の相互作用のメカニズムとその意義に関する研究成果をまとめ、論文として報告する。(4)オートファゴソーム膜前駆体の同定と、その形成機構、膜の伸張機構と膜供給源に関する計画をさらに進行し、論文にまとめる。(5)Rab GTPaseであるYpt1のGTPase活性化因子 Gyp1とAtg8と相互作用のメカニズムと重要性に関するこれまでの成果をまとめ、論文として発表する。(6)Atg39、Atg40のヌクレオファジー、ERファジーにおける機能と動態の解析をさらに進め、論文にまとめる。(7)核と小胞体の選択的オートファジーの生理的意義を明らかにする。(8)ヌクレオポリンの選択的オートファジーのメカニズムを明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 4件、 招待講演 9件) 備考 (1件)
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http://www.nakatogawa-lab.bio.titech.ac.jp/