計画研究
昨年度決定したAtg1-Atg13複合体およびAtg13-Atg17複合体の構造およびそれに基づいた機能解析を統合することで、飢餓依存的なAtg1複合体形成機構に関する論文をまとめた。さらにAtg13内に第二のAtg17結合領域が存在することを見出し、その領域とAtg17との複合体の結晶構造を決定した。従来の結合領域がAtg17二量体のN末端付近に結合していたのに対し、第二の結合領域はそこから遠く離れた、二量体形成面付近に結合していた。それは一分子のAtg13が同一のAtg17二量体に二ヶ所で結合し得ない距離であり、異なる2つのAtg17二量体を橋渡しする形で結合することを強く示唆し、実際にin vitroでAtg13はAtg17の凝集を引き起こした。この現象はオートファゴソーム形成の場であるPre-autophagosomal structureの構築メカニズムを示唆しており、現在機能解析を進めている。出芽酵母Atg1複合体に対応する哺乳類ULK複合体は、出芽酵母にない因子Atg101を持ち、Atg101はAtg13と安定な複合体を形成する。哺乳類オートファジーに重要なAtg101の構造と機能を明らかにするため、哺乳類同様、Atg101を保存した分裂酵母の系を用いて、Atg101-Atg13複合体の結晶構造を決定した。Atg13はHORMAドメインと天然変性領域からなるが、興味深いことにAtg101もHORMA様の構造を持ち、Atg13とHORMA-HORMA二量体を形成することでAtg13のHORMA構造を安定化していた。哺乳類細胞を用いた解析により、Atg101はAtg13の安定化以外にも重要な役割を担うことが明らかとなった。出芽酵母におけるオートファジーの選択的積荷であるApe1およびAms1について、単独あるいはアダプター蛋白質であるAtg19, Atg34との複合体として結晶化に成功し、それぞれ初期構造の決定に成功した。現在構造の精密化を進めている。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では酵母の主要Atg因子群、様々な選択的基質認識に関わるアダプター因子群、そして哺乳類オートファジーを制御する因子群の構造解析を行い、オートファゴソーム形成機構や選択的基質認識機構など、オートファジーの未解決課題解明に向けて構造基盤を確立することを目指している。本年度は主要Atg因子群のなかでも中核的役割を担うAtg1複合体について、構造機能研究に大幅な進展が見られた。またアダプター因子群についてはAtg19、Atg34という2つの因子についてそれぞれの基質蛋白質との複合体として結晶化に成功し、構造解析も順調に進んでいる。さらに哺乳類オートファジーを制御する因子群の構造解析では、Atg101の構造をAtg13との複合体として決定することに成功し、こちらも順調に進展している。
酵母の主要Atg因子群に関しては、Atg1複合体に関する更なる構造機能研究を進めるとともに、その下流因子群であるAtg9、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ複合体、Atg2-Atg18複合体等の調製および結晶化を進める。アダプター因子群についてはAtg19, Atg34とそれぞれの積荷の複合体の構造解析を完了し、構造に基づいた機能解析を進めることで、選択的積荷認識機構を明らかにする。哺乳類オートファジーを制御する因子群については、Atg101と並んで高等生物固有の因子であるFIP200に関して結晶化と構造解析を進める。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件)
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