計画研究
昨年度決定したAtg13-Atg101複合体構造に基づき、詳細な機能解析を行った結果、出芽酵母のAtg13は単独で安定な構造を持つのに対し、分裂酵母や哺乳類のAtg13は本質的に不安定な構造を有し、その安定化のためにAtg101を必要とすることが明らかとなった。さらにAtg101内に機能ループ(WFフィンガー)を見出し、Atg101がWFフィンガーを介して下流Atg因子のリクルートを担うことが明らかとなった。以上の結果はAtg101に関する初めての構造・機能情報であり、論文として報告した。出芽酵母におけるオートファジーの選択的積荷であるApe1について、単独あるいはアダプター蛋白質であるAtg19との複合体として結晶構造を決定した。その結果、Ape1はホモ12量体からなる正四面体構造を取り、12本のプロペプチドを外に提示していること、プロペプチドはホモ三量体コイルドコイル構造を取ること、一方でAtg19のコイルドコイルはプロペプチドと2:1のヘテロ三量体コイルドコイル構造を取ることが明らかとなった。現在in vitro、in vivo両面での機能解析を進めている。Atg8はオートファジーにおける中心的な制御因子であり、高等生物では複数ホモログが存在することが知られている。線虫のAtg8ホモログLGG-1、LGG-2の結晶構造を多様な結合相手との複合体状態で決定し、これまでに報告された哺乳類ホモログとの構造比較を行った結果、LGG-1および哺乳類GABARAPファミリーはクローズ型、LGG-2および哺乳類LC3ファミリーはオープン型のN末端構造を取ることが明らかとなった。詳細な機能解析の結果、クローズ型構造は膜の融合活性に必要であることが示唆された。また2つのファミリー間でターゲットの特異性に違いがあることも明らかとなった。以上の結果は高等生物のAtg8ファミリーの機能分担を明らかにするための基盤となる成果であり、論文として報告した。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では酵母の主要Atg因子群、様々な選択的基質認識に関わるアダプター因子群、そして哺乳類オートファジーを制御する因子群の構造解析を行い、オートファゴソーム形成機構や選択的基質認識機構など、オートファジーの未解決課題解明に向けて構造基盤を確立することを目指している。本年度はアダプター因子群についてAtg19-Ape1複合体の詳細な構造決定に成功し、凝集蛋白質の選択的オートファジーの分子基盤が明らかとなった。さらに哺乳類オートファジーを制御する因子群の構造解析では、Atg101-Atg13複合体構造に基づき高等生物固有の制御機構が明らかとなり、さらに線虫LGG-1,2の構造機能解析を通して高等生物固有の機能分担の分子基盤が明らかとなるなど、順調に進展している。
酵母の主要Atg因子群に関しては、Atg1複合体に関する更なる構造機能研究を進めるとともに、その下流因子群であるAtg9、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ複合体、Atg2-Atg18複合体等の調製および結晶化、場合によってはクライオ電子顕微鏡や高速原子間力顕微鏡を用いた構造解析も進める。アダプター因子群についてはAtg19, Atg34とそれら共通の積荷であるAms1との複合体の構造解析を完了し、構造に基づいた機能解析を進めることで、可溶性蛋白質の選択的認識機構を明らかにする。哺乳類オートファジーを制御する因子群については、Atg101と並んで高等生物固有の因子であるFIP200に関して結晶化と構造解析を進める。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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